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ブログ・川﨑 依邦
労働審判・全面勝利体験報告(9)きっぱり「NO」と言えるか
2010年7月15日
合意書第2項の有効性に関する申立人の主張
「合意書第2項『退職したことをもって株式会社プレジャー(相手方)と乙(申立人)との間には一切の債権、債務はないことを確認する』(以下『第2条』という)によって清算しようとする両者間の権利関係については、未払いの割増賃金を清算しようとする場合は、その具体的金額が要素であるといえる。もし申立人が、未払い金額が約370万円にものぼることを認識していたならば、合意書に署名するに至らなかったであろうことは、一般取引の通念に照らして至当であるから、民法第95条(錯誤)により第2条に関する合意は無効である」
「申立人は、社会保険労務士の資格を有すると称する社長の虚偽の説明により、自己は管理職に該当し割増賃金の請求権はないものと錯誤に陥ったことにより合意書に署名したのであるから、民法第96条(詐欺)に基づき、本申立書の送達をもって当該条項に関する合意を取り消す。合意書第2項は、相手方が違法な人事権の行使により申立人を退職に追い込んだあげく、労働基準法第119条により懲役刑に処せられる可能性すらある違法行為(時間外割増賃金の未払い)を隠蔽し、なおかつ強行法規たる同法第37条の趣旨の潜脱を目的として設けたものであり、公の秩序および善良の風俗に反する。よって民法第90条(公序良俗違反)により無効である」(以上、申立書より)未払い金額370万円とは何たることか。申立人の年収はおよそ560万円なので、合計すると930万円となる。中小運送業の経営実態からすると、配車管理者に1000万円近い年収を支払えるものではない。配車管理者が名ばかり管理者とすると、中小運送業の経営に与えるショックは大きい。経営が立ち行かなくなることは目に見えている。にもかかわらず申立人は「法律」に則って堂々と請求してくる。極端に言えば「経営がどうなろうと知ったことではない。払うものは払え」と言わんばかりである。
運送業の経営者は心してかからねばならない。このような経営を揺るがすような要求に対して、キッパリとNOと言えるようになっているか。就業規則や給与規定はキチンとしているか。配車管理者に対して、管理者としての自覚を持たせているか。処遇面はどうか。
足元を見つめると、こうした要求を跳ね返していける中小運送業は多くない。むしろレアケースではないか。企業を守るためにも足元をしっかりすること=労務管理をキチンとすることである。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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