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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(8)低収益率に喘ぐ
2011年8月5日
?収益力が低く財務基盤が弱い
「働けど働けど我が暮らし楽にならざり。じっと手を見る」。石川啄木の短歌である。まさに中小運送業の現実である。
全ト協の「経営分析報告書」によると、車両台数10台未満の運送会社は3年連続の営業赤字である。不思議ですらある。いわゆる「トッチャン・カアチャン」なので一般管理費は低いはず。事務所も金をかけていないはずである。にもかかわらず3年連続赤字とは一体どうしたことか。10台未満だけではない。一般的に中小運送業は低収益率に喘いでいる。ドライバーの賃金はどうか。1か月23日の稼働で地場のドライバーの平均イメージを述べる。1日は出庫から入庫までで拘束時間は12─13時間。仕事に追われてゆっくり食事もとれない。コンビニでの弁当を車内で慌ただしくかき込む。その上、待機時間もある。そこで賃金は2?ドライバーで23万円(手取りで20万円)、4?ドライバーで25万円(同22万円)、大型ドライバーで30万円(同27万円)といったところである。
賞与は寸志、もしくはなし。退職金も気持ちのレベル。気持ちとは3年以上働いて月額給与の1か月分程度のことで、これでも退職金があるだけマシと言える。退職金制度なしの中小運送業も珍しくない。そもそも3年以上続くドライバーは50%もいれば上出来で、入社しては辞めていくの繰り返しの日々だ。
このような平均レベルの給与をドライバーに支払うとなると、役員報酬があまり取れない。月100万円の報酬を受け取る中小運送業の経営者は少ない。中には65歳以上になったので、年金をもらい役員報酬は30万円とか、ドライバーより低い報酬の経営者も珍しくない。
生業、家業として家族で一つになってやりくりしており、まさに「働けど働けど我が暮らし楽にならざり。じっと手を見る」の現実である。しかも借金体質で、車を現金で購入できる程の資金繰りの余裕がない。中小運送業の平均イメージとして借金は年商の30%といったところが多い。
収益力が低く財務基盤が弱い原因はどこにあるのか。背景として、荷主に対して弱いというところがある。運賃値引きを跳ね返していける交渉力もない。極端に言えば代官様と百姓の関係である。代官様の言うことには逆らえない。「ははぁー」とひざまずくしかない。荷主隷属状況という背景がある。荷主に対しての提案力もなく、営業開拓力もないというのが中小運送業である。荷主開拓に割ける時間も金もない。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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