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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(48)労働組合の言い分
2012年6月8日
「一人でも入れる労働組合」は中小企業の経営者に対して、表面上は鋭く要求を振りかざすケースも多い。
夏の一時金は一律100万円、年収700万円以上、退職金700万円以上と要求してくる。労働基準法で定めている有給休暇もしっかりと要求してくる。中小企業の経営者は、こうした要求を突きつけられてうろたえる。「冗談を言っているのか」と反感、反発を覚える。「苦しい経営の中で必死に生き延びていこうとしているのに、この要求はなんだ」と反発してしまう。中小企業の経営者といっても、ドライバーが急に休むとハンドルを握ることもある。資金繰りの苦しさにヒイヒイ言っている。荷主と対等にモノも言えない。「運送屋の代わりはどこにでもいる」と、平気で運賃値引きを迫ってくることもある。心情として、ドライバーから搾取しているとはとても思えない。その上、銀行からの借入金にも連帯保証している。会社が立ち行かなくなって倒産すると、自らの人生もパーとなる。そこへ強烈パンチ、労働組合の要求が襲ってくる。「一瞬、会社を畳んでしまおうと頭をかすめたよ」。ある経営者の言である。
労働組合には言い分がある。労働組合は、会社と対等な立場で労働条件の向上について交渉する。表面上はきつくするのが労働組合である。きつくすることで、分会員に自信を持たせる。「会社に言いたいことを言っても大丈夫」と自信を持たせる。その上、経営者には一発パンチというか、ショックを与える。「労働組合を甘くみるな」というわけである。資本家の圧制に抗して世の中を変えていくことが、労働組合の立場である。労使が分かりあい、協調していくことはあり得ない。労使は対立するようにできているというわけである。「労働者よ、目を覚ませ」「労働者よ、団結せよ」とアピールするわけである。ところが、労働組合の幹部は「本音」がある。「社長が苦しいのはよく分かっていますよ。今時、運送会社で儲かっている会社は数えるほどしかないこともよく知っていますよ」。
この表面上と本音に直面しているのが、中小企業の経営者である。労働組合幹部の「本音」を聞いても「じゃあ労使協調」とはならない。一人でも入れる労働組合と中小企業経営者とのギャップは深く不信が大きい。突き詰めて言えば、互いが共闘して圧制に立ち向かうべきだとの考え方もある。ところがギャップが深く、中小企業経営者にとっては「一人でも入れる労働組合との圧制に対する共闘はとんでもない」となる。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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