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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(2)運送業は不況業種
2013年4月5日
運送業は不況業種である。自車収支は赤字が大半だ。
自車収支とは(1)運送収入─(2)ドライバーの労務費−(3)燃料費−(4)車両費(税、保険料、車の減価償却費、車のリース料、修繕費、車検代、タイヤ代)−(5)有料代−(6)その他(車庫代、制服代、伝票代、健康診断費用等)=(7)売上総利益−(8)販売費及び−般管理費=(9)営業利益−(10)営業外費用(支払利息)=(11)経常利益のことである。(7)売上総利益は運送収入に対して25%以上が優良企業の基準。(8)販管費は売り上げに対して20%以下である。(7)25%─(8)20%=5%が営業利益である。営業外費用は2%とすると経常利益は3%、経常利益3%以上が優良企業の条件だが、経常利益が赤字となっているのが運送業の現実だ。
業界最大手のY社の経常利益は約5%。Y社は協力運送会社を使っている。傭車差益率は少なく見積もっても15%はある。にもかかわらず経常利益率が5%ということは、Y社の社員ドライバーの自車収支は赤字であると推定される。Y社ですら社員ドライバーの自車収支は厳しい数字で、中小運送業で自車収支が苦しいのは当たり前である。それでも経常利益で3%以上確保している運送会社の特長はどこにあるか。それは協力運送会社の傭車差益率に支えられている。
従って中小運送会社、とりわけ10台以下の会社は赤字である。10台以下の会社は販管費率は20%もかからない。かかってもせいぜい10%である。にもかかわらず経常利益が赤字とはどういうことか。しかも自己資本がマイナスとなって債務超過に陥っている企業も多い。
筆者の経営コンサルティングの実感からすると、10台以下の会社の50%は実質債務超過である。実質とは、正味に資産を査定すると含み損が隠れていたりしているからである。粉飾決算をしている。しかも社長の報酬は50万円/月以下というケースも珍しくない。配車と事務と車両管理などの管理を社長一人で行い、自転車操業の資金繰りが続く。社会保険料や消費税は分納して、まともに社長報酬も受け取れない。ドライバーの給料を優先するからだ。運送業は元請けがあって1次、2次、3次と下請け構造となっている。このままいくと中小運送業の経営は破綻する。「経営再生」に賭けるしかない。(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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