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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(136)物流子会社の生き残り作戦〈事例B〉(3)
2016年12月9日
〈制度改革でやる気に〉
B社長は強い決意で抜本改革に着手する。
(1)配車体制の改革
不正を働いていた配車担当者をどうするか。社内の空気としては「悪いことをしていたな。でも、本人も反省している。許すしかないのではないか」。それに対してB社長は、配車体制の改革を断固決意する。不正を働いていた配車担当者はクビである。新しい配車担当を選任しようとするが、なかなか引き受ける者がいない。目星を付けた者ことごとくが尻込みをする。「わたしは適任ではありません。すみませんが、ほかの人を探して下さい」
実は、現場から事務所に入り、配車担当者の机に座ると給料が目減りする。残業が付かないので、金額にして月5万〜6万円はダウンする。そのうえ頭を使わないといけない。現状の仕事は体を使う。体の疲れはお酒の一杯でも飲んで、グッスリ寝ればスッキリする。しかし、頭を使う仕事は酒一杯飲めば吹き飛んでしまうものではない。
夜中でもいろいろ気になって眠れない日もある。仕事の段取り、車の手配を考えるとイライラし、胃がチクチクし、ゆっくり眠れない。その上給料もダウンする。「好き好んでやる仕事ではない。リベートを取っていた配車担当者も悪いが、そうでもしなければやっておれなかった気持ちも分かるよ」
B社長はニッチもサッチもいかなくなる。悩んだ末、配車担当者に成果配分制度を導入することとした。つまり、運送収入から変動費(燃料費、高速代など)を差し引いた粗利益額の一定割合を、新任の配車担当者に配分することとした。
粗利益額の目標値を設定し、一定割合としてオーバー部分の10%を配分するとした。そうすれば、配車担当者は一人ひとりの乗務員に燃費効率の向上をアドバイスし、高速代の節約についても指示しようとする。目の色が変わるはずである。日々の労苦に報いることができる。
かくして30代の若手の乗務員が「やります」と手を挙げた。入社6年目の中堅ドライバーである。自車優先配車を旗印に掲げて、配車体制を確立することとした。外部に流れ出している傭車費の大幅削減、いわば内制化である。
今までの配車担当者は「傭車をカットすると、忙しくなって車が必要な時に集められなくなります」と言って、自車優先に反対してきた。そのやり方の改革である。「これから忙しくなることがあろうか」—-。見通しは暗い。生きるか死ぬかの状況が続く。断固として自車を遊ばせてはならない。働き抜いてもらうしかない。 -
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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