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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(149)ゼロになるまでヤル〈事例A〉
2017年3月31日
〈厳しい状況の直面〉
今までは楽であった。一つの荷主に15台ばかり専属車を入れているので、配車の苦労がない。配車は荷主のほうでやってくれる。社員の欠勤時の対応さえキッチリやっておれば問題ない。代行ということで、経営者がハンドルを握る。
いわゆる一般管理費は、ほとんど掛からない。自宅兼用の事務所で、留守番、電話番の女性が一人。この女性は経営者の奥さんである。よく働く。給与計算の担当でもある。
経理は、一言で言って「他人任せ」である。決算書の作成、月次の試算表の作成は税理士任せである。奥さんは、資金繰りさえしておればよい。要するに、お金さえ回ればいいわけである。このスタイルで長年やってきた。もうかることもあった。笑いが止まらないこともあった。社員を連れて、月1回は高級なすし屋でドンチャン騒ぎをしていたころもあった。それも今は、はるか昔のことになった。決算になると、税理士と相談する。「今年は、どのくらいの税金にしますか」。この調子でいけたのである。
ここ5年は、税金どころではない。実質赤字の連続である。
「これから、どうしたらいいのでしょうか。現行よりさらに10%ダウンすると、いよいよ厳しい。30年間頑張ってきましたが、つらいですよ。辞められるものなら辞めたいですよ。しかし、ここで辞めたらどうなるか。車の借金が残る。銀行の借入金をどうするか。このまま行けば倒産です。10%ダウンを承知しても、このままいけば倒産です。早いか遅いかの差だけです」
経営者夫婦には長男がいる。長男は30歳。家業は継いでいない。どういうわけか、大学院を卒業し、学者の道に入っている。それも心理学の世界である。心理学と運送業ではギャップがある。学問の世界とハンドルの世界のギャップである。「今さら息子に、帰ってこいとは言えません。息子には無理です。こんなしんどい仕事を継げとは、親としては、よう言いません」
社員は平均年齢50歳に近い中高年ドライバーの集団、後継者もいない、主要荷主からの値引き攻勢が続く。しかも、経営者も高齢である。確かに前途は厳しい。途方にくれるとは、このことである。「どうしたらいいのでしょうか」との声が迫ってくる。 -
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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