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射界
2018年1月22日号 射界
2018年3月9日
「蝸牛角上(かぎゅうかくじょう)の争い」という寓話がある。この世の中、何事も「勝った・負けた」と血眼になって争うが、広大な宇宙空間から見れば、〝ちいせい、ちいせい〟と言いたくなると比喩した寓話。中国の古典である『荘子』にあって、心は常に大きく持ちなさいと教えている。
▲『荘子』にもう一つ、大鵬の寓話がある。大鵬が大きな翼を広げて9万里の上空を飛んでいく。それを見た地上の蝉や小鳩が「小さな木の梢に飛びつくのもタイヘンなのに、9万里の上空を飛ぶ奴の気が知れない」と毒つく。だが、『荘子』によれば、大鵬こそが生きる道の実践者で、蝉や小鳩の強がりこそ〝ちいせい、ちいせい〟と戒めているのだ。
▲そして今、社会では色んな場面で差別が行われ、時には人権問題にまで発展することさえ報道されている。『荘子』はすでに差別についても論評しており、「表面的な公平に惑わされてはならない」と強く警告しているのが印象的だ。ともすれば時代の流れに身を委ねがちだが、いつの間にか「別の差別感」に陥っていないか反省したいと指摘している。
▲『荘子』は広い大きな心を持てば、そんな差別感もなくなり、誤解も解消するという。そうはいっても利害得失が渦巻く現世、理解と実践は一致しないのが常識。そんな弱さを弁解に使えば、それこそ〝ちいせい、ちいせい〟と笑われるかも知れない。それを見透かされたのか、『荘子』は「どうぞご自由に」ともいう。我が身を恥じて恐れ入るばかりである。
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