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ブログ・小山 雅敬
第139回:運送会社の事業承継対策
2018年9月11日
【質問】創業者で社長の父は現在65歳です。私は長男(29歳)であり、将来は社長を継ぐことになると思っていますが、父から交代時期など具体的な話はありません。父は全て自分で決める性格なので、元気なうちは社長を続けるつもりだと思います。他の運送会社では事業承継について、どのようなタイミングで取り組まれていますか?
最近、運送会社からの相談で、経営の代替わりに関する話が急に増えてきました。運送会社は昭和40年代から50年代にかけて創業した会社が比較的多いため、創業社長の年齢が既に60歳代後半から70歳代に達しています。ちょうど、代替わりの時期に直面している会社が多いのです。本来であれば、承継時期の約10年前から計画的に準備を進め、時期が来たら円滑に代替わりするはずなのですが、現社長が体力の衰えを感じるまで経営を頑張るため、事業承継対策が後手に回っている会社が見られます。
創業社長によく見られる傾向です。おそらく今後3年以内に世代交代が集中して発生する事業承継のピークを迎えると思います。中小運送会社では社長に子供がいない場合に、M&Aを検討、もしくは信頼できる役員に会社を任せる選択をする会社もありますが、子供など親族への承継が一般的に多く見られます。子供は父が承継の準備を進めてくれるだろうと思っていますが、多くの会社で、具体的な準備が進んでいません。
準備をしないうちに社長が急逝し、後継者が大変苦労している例を何社も見ています。事業承継は誰に承継するかを決めたら、毎年計画的に準備を進めることが絶対に必要です。例えば生前贈与を活用するなら、長期間にわたる継続した対策が必要です。自社株の移転方法や相続税の資金準備などをよく検討しないと将来親族間の争いに発展することがあります。また後継者の育成計画を疎かにすると、取引先や従業員の離反につながり、会社が危機に瀕するケースもあります。経営者の中には「うちは有限会社だから特に対策は必要ないのでは」とか「代替わりの時期になったら顧問税理士に相談すれば良いだろう」などと誤った理解をしている人もいます。
現社長が経営している間に社内の整備を進め、後継者が苦労しない体制を構築しておくことが最も大事なことです。経営理念や事業計画などを社内で共有し、社内制度の不備な点を整備しておくことが重要なのです。世代交代直後によく労使トラブルが発生しますので、事業承継の準備は早ければ早いほうが良いと言えます。後継者は親に任せるのではなく、事業承継について自発的に話し合いの場を設けることが必要です。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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