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ブログ・小山 雅敬
第141回:事故分担金払戻し請求トラブルへの対策
2018年10月9日
【質問】先日、退職したドライバーから「在職中に事故の修理代として、一方的に賃金から○○万円控除されたのは不当だ」として事故分担金の払い戻しを請求されました。今後、このようなトラブルを回避したいと思いますが、どのようにすれば良いでしょうか?
このところ運送会社で事故分担金に関するトラブルが急増しています。この背景には、残業代未払い請求に併せて、同時に事故分担金についても払い戻しを請求するケースが増加していることが挙げられます。ほとんどのケースでは退職したばかりの従業員から請求が来ています。最近はインターネット経由で相談した専門家から助言を受けて、同時に請求してくる事例が増加しているようです。
従来から運送業では、本人の不注意による事故で発生した損害は、「事故を起こした当事者が応分の負担をすべき」「それにより事故防止の意識を高めることが出来る」との考え方が浸透しており、中小運送会社には、いまだにその考え方に基づいて運用している会社が多く見られます。本人の故意または過失により発生した損害について、本人と話し合いの上、実損額の一部について負担を求めることは許されますが、過度に負担を求め、会社が一方的に賠償額を決めて賃金から控除することは禁じられています。事故分担金に関するトラブルの防止策は、現行のルールを改定する以外に方法はありません。
まず、事故で生じた損害の全額を社員に負担させる考え方は捨てるべきです。すなわち、保険免責額相当分を全額社員に負担させることをやめ、事故分担金はドライバーの過失に応じて実損額(保険免責額もしくは修理代などの実費)の3割以内で決めたほうが良いと思います。あらかじめ、判断基準となる分担割合を規程などで定めておくと良いでしょう。この際、実損額とは無関係に、あらかじめ金額を決めておくことは違法ですので注意してください。本人とよく話し合い、その都度、確認書を取り交わしてください。一括ではなく、給与から分割で支払いたいとの希望があれば、本人から金額を申し出てもらい、書面で確認しておく必要があります。そもそも、賃金体系の中に安全行動の取り組み度合や事故の実績などを評価して手当に直接反映させる仕組みがあれば、事故分担金のようなトラブルになりやすい制度に依存する必要がなくなります。
根本的に解決するためには、賃金体系の見直しと評価制度の構築を早期に検討すべきといえます。事故分担金制度を見直し、社員が安心して働ける職場を目指したいと思います。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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