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物流ニュース
障害者の雇用が人材不足を救う 理解示す運送会社
2018年9月6日
今年4月に改正した障害者雇用促進法により、民間企業では2・2%、国や地方公共団体などでは2・5%、都道府県などの教育委員会では2・4%の雇用数に応じて障害者の雇用が義務付けられている。しかし、厚労省が調査したところ、障害者手帳を持たない人までも障害者雇用として、一部の国の機関では雇用数を水増ししたことが大きな問題となっている。民間企業では雇用割合に達していない場合は不足1人に対して毎月5万円の納付金徴収が義務づけられている。厚労省の調査では昨年だけで計295億円の納付金が徴収されていた。こんな中、人材不足で苦しむ運送事業者の中には、専門機関に人材の募集を行うなど、率先して障害者の雇用を行う運送会社も存在しており、国の機関であるにもかかわらず、障害者雇用の水増し行為を行った機関とは違って、障害者雇用に対して意識が高いようだ。
大阪市でトラックやバス、タクシー事業を始め保管・加工などの事業を展開する運送A社では「障害者雇用促進法が以前から存在していたことは知っていて、当社でも事業の中で福祉事業を行っている。創業者が率先して障害者雇用を推進してきたことから、同社では運送事業でもドライバー1人、保管・加工事業で2人の障害者雇用を行っていて、現在定められている企業従業員100人規模の事業者の割合の2・2%はクリアしている」と説明。
A社では実際に、どのような部門で障害者雇用を行っているのかについて「1人はドライバーとして勤務しており、障害一級の方で、体自体は大きな障害もなく、本人もドライバーとしての職務を希望しており、適性診断なども受診して問題ないことからドライバーとして、2㌧トラックに乗務。勤務時間に関しては基本的には定時での配送となっている。やはり若干、体に不自由な部分もあることから、あまり疲れる勤務は避けているものの、基本的には他のドライバーと同じ業務を行い、健常者と同じ条件で働いている」と話す。
また、「保管・加工部門で働く障害者については、健常者よりも集中力が高く、一度取り組んだ仕事については集中的に業務を行い、当社としても評価が高い。また現在、加工・保管業務に従事する障害者の1人は、高校時代に当社に職場体験で訪れた際、勤務内容が気に入って卒業後、当社への勤務を希望し、現在、当社に入社して2年が経過するものの、他の従業員の模範となる勤務ぶりを見せて、今後も専門機関(障害者雇用促進に関する団体)に紹介などを依頼している」と話し、障害者雇用に積極的に取り組んでいる。
また、大阪府堺市で冷凍輸送や海コン輸送、キャリアカー輸送など様々な運送事業を展開する運送B社では「当社では社員数100人に満たない状態であるものの、過去には聴覚障害を持つドライバーの採用を行った。また、現在でも事務職で1人の障害者が勤務しており、当社としても障害者雇用促進法に定められる雇用数100人に達することを考慮する意味でも、障害者雇用に努めていく考え」と話す。
B社では「1年前には聴覚障害者の方が一般で公募があり、社会保険労務士に相談し、適性検査などをクリアしたうえで、キャリアカーの乗務をこなしている。勤務は真面目で素直に業務を遂行してくれたものの、過去には障害者専門の機関で働いていたこともあり、当社のような一般企業での勤務は経験がなかったのか多忙な業務に疲れたようで退社を希望した。勤務態度が非常に真面目だったので継続勤務を望んだが体力的に厳しいとのことだった」と退職に至るケースもあるようだ。
その後、「昨年暮れから、現在勤務している身体障害のある方に勤務してもらっていて、この方も過去にはトラック運送でドライバーを務めていたことから、事務職でもその経験をもとにドライバーへの指示などもできる。現在でもオートマチック車のトラックであれば問題なくトラックには乗務できるが、当社では内勤事務職として勤務し、管理業務から一部営業業務を行ってもらっていて非常に助かっている。今後も当社では一般をはじめ専門機関があれば、そういった機関も通じて障害者雇用には取り組む考えだ」と語った。
他にも従業員100人以下の運送会社でも障害者の学校からの職場体験を受け入れる運送会社も存在し、障害者雇用に理解を示す運送会社も多く、深刻化する人材不足の中で障害者雇用は運送事業を救うのかもしれない。
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