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ブログ・小山 雅敬
第143回:今は荷主との価格交渉に取り組むべき時期
2018年11月6日
【質問】標準運送約款の改正もあり、今は荷主交渉に取り組むべき時期だと思いますが、どのようなスタンスで交渉を進めれば良いのでしょうか? 成功している運送会社の例があれば教えてください。
4日から標準運送約款が改正になりました。従来の運賃とは別に、積み込みや取り卸しなどの料金を収受していくことになります。この改正は長年にわたる運送事業者の切実な声(「荷役作業がサービス化している」など)に応える形で実現したものです。運送業務に対して適正な対価を求めていこうとする画期的な改正といえます。
弊社の顧問先運送会社は北海道から九州まで全国各地に所在しますが、大半の会社では改正前からすでに価格交渉を集中して行っています。今回の改正時の段階で、ほぼ運賃交渉は終了しており、一定の成果が出ている状況でした。今後は新約款に沿った料金交渉に移ります。成功のポイントは、現状の原価実態を提示して実情を認知してもらうことが第一です。そこから交渉がスタートします。ある会社は荷主に遠慮して、実態の原価を低めに設定し直そうとしていましたが、私はそのまま提示することを勧めました。人が集まらなければ運送業は継続できません。今は躊躇している状況ではないのです。
また、待機時間削減と待機後の作業開始時刻を明示してもらう交渉も併せて行う必要があります。交渉の過程で、今回の標準運送約款改正と書面化ガイドライン改正の流れ、国交省作成の情宣用リーフレットが役立ったことは確かです。
なぜ今、価格交渉に集中して取り組まなければならないかというと、それは「人材確保」のためです。必要な人材を確保するためには賃金を上げる必要があります。運送会社の賃金は運賃収入と車種別労務費率で決まる仕組みであり、車両1台当たりの売り上げを上げない限り、給料を上げることは出来ません。
一方、最近の5年間で採用できる実質賃金ベースは各地で月3万円超上昇しています。首都圏など都市部では4万〜5万円上昇しています。近年、各社が人材確保対策としてホームページ作成などの求人活動に注力していますが、根本的な問題である価格交渉について各社の取り組みには今、大きなばらつきがあります。運送事業者は今こそ価格交渉に集中して取り組むべき絶好の機会が到来したと認識すべきです。この時期を漫然と過ごし、結果として賃金を上げられず、人が集まらないという悪循環に陥らないことが重要です。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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