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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(214)親分肌のリーダー〈事例A〉
2018年9月17日
〈9人の反乱軍〉
創業して30年、中堅企業として地歩を固めてきたA物流企業に、会社始まって以来の異変が起きた。異変とは、営業所の会社員10人が所長を含めて、退職を申し出てきたことである。社長は衝撃を受けた。
「一体これはどうしたことか」
まず、所長が辞めた。退職を申し出て1か月、懸命の慰留を振り切った。トップは「そこまで固い決意か。好きにしろ」と了解した。
所長の退職理由は、「自分で商売がしたい」とのことであった。異変の表面化は、これから始まる。後任所長の人選では、緊急事態として、本社から1人、所長代行として赴任させることに決定した。
その時、〝反乱〟としか言いようのない事態が出現した。残りの9人全員の退職申し出である。これから繁忙期に入るというタイミングである。あいくちを突き付けられたようなものである。9人の中には所長代理という幹部もいる。9人の申し出は、次のごとくである。
◎本社からの所長代行赴任は「ノー」である。
今さら本社の人間に来てもらいたくない。われわれは必死になって働いてきた。その時、本社の人間は、われわれを助けてくれたか。本社は書類をファクスで垂れ流しているだけではないか。本社からの所長代行赴任はノーである。
◎月額給与を一律1人10万円アップせよ。
月額給与を一律1人10万円アップしてほしい。アップの理由は、「それだけ働いている。給料が低い。断固として10万円上げてほしい」だ。
この2つのことが受け入れられないなら、10日後、全員退職する。回答してほしい。
9人の人員構成は所長代理と、後は乗務員である。平均年齢も30歳と若い。果たして給与は安いか。平均年収は550万円。業界水準からいって、安いとはいえない。年間総労働時間は、ざっと2800時間。25歳の若者でも500万円の年収である。なぜ、10万円のアップという強硬なことを言うのか。
本社のスタッフは、大企業経験者で固めている。A物流企業は、創業から中堅企業へと成長するプロセスを模索してきた。プロセス、この2年間に人材紹介専門会社の斡旋で、大企業から人材を続々と導入している。その数は10人。全従業員200人の5%になっている。年収の5%の手数料と、紹介手数料として1人平均60万円ほどを掛けての人材投資である。
反乱軍の思いは、「オレたちは現場で汗を流している。オヤジは何を考えているのだ。わけも分からないものばかり本社に入れて、どういうことだ。働きもしない本社スタッフを支えるのはイヤだ。やつらを辞めさせろ。その分、オレたちの給料を上げてくれ」
あいくちを突き付けての退職申し出である。トップはがく然とする。
「オレの思いは彼らに伝わっていない」
(つづく)
この記事へのコメント
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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