-
ブログ・花房 陵
在庫の関わり方
2007年8月6日
●在庫は時間のリスクです
製造調達と販売までの間が在庫の理由です。製造が売れるときに間に合わないから、
販売もたくさん揃えておかないといつ売れるか分からないから、製造と販売の都合で
在庫が膨らむようになります。
速く作る方法を生み出せれば、在庫は少なくても大丈夫です。
売りたいタイミングをきちんと押さえておけば、在庫は少なくても大丈夫です。
~~だが、○○できれば、在庫は少なくても良いのです。~~できない理由が、時間
のリスク、間に合わない、作れない、揃えられない、・・・時間のリスクだけれど、時間
稼ぎのクスリなのです。
●在庫が合わない、無くなっている
在庫管理は入荷、出荷の繰り返しを正しい帳簿に正しい日付で記録することです。
紛らわしい伝票を止めて、デジタルコードで品番を管理するようにすれば、記録ミスは
ずいぶんと減りますが、なかなか無くなりませんね。
在庫を合わせるときには、現場で利用する帳簿と営業や本社で使う帳簿を分けている
から合わなくなるのです。そして、帳簿の混乱と実物のカウント作業が正確でないから
想像以上の在庫誤差が生じています。
在庫誤差の代表的なミスは、棚卸しや実物を点検する際のカウント作業にあります。
商品を混在させたり品番を読み違えたり、カウント作業はたいへんな労力を掛けている
割には、あっさりとミスが生まれてしまいます。デジタル機器の導入が効果を生みやす
いから、棚卸し誤差対策だけでも先行させたいものです。
次に合わないのは、帳簿の取り違えです。現物数→物流帳簿への転記→営業帳簿
現物カウントだけの問題解決が終わると、次は伝票と帳簿の連動を調べなくてはなり
ません。大きく差異になってしまうのは、伝票記録が漏れたりずれたりする事の原因
が多いからです。
特に返品処理や倉庫間移動の振替伝票では、伝票区分とシステム操作が伴います
ので、処理ミスが生まれやすいのです。
●在庫をきちんと管理する
物流現場では在庫の置き方、整列の方法、良く動くモノと備蓄品など、在庫の管理の
見て分かる方法がずいぶんと在庫誤差精度に影響します。きちんとした在庫の置き方
は精度や在庫削減にも効果的な働きかけをしている姿と重なります。
在庫情報が正しくタイムリーに提供できなければ、余計なリスクとクスリを欲しがるこ
とになるからです。
昨日と今日、売れた分がちゃんと明日の販売用に管理されているかどうか、それ以上
に多くなっていないかどうかをいつでも分かるようにするには、現物の管理と帳簿情報
の正確さが必要だからです。
現場のモノの管理は、人の作業の作法や意欲にもつながっていて、倉庫内が整然として
いる現場ではミスも少なく、コストも安定しているのです。
きちんとした仕事はきちんとした人からしか生まれませんし、人を見なくともモノを見れば
その作業や作法を想像することができるのです。
在庫は物流作業の結果ですが、作業者の意欲や現場の風土が逆に在庫の姿に現れて
いるのも、不思議な原則と思います。
●在庫は単品で
品番管理、単品管理、SKUなど、在庫の呼び方はたくさんありますが、すべてアイテム、
単品で見るようにしないと在庫の姿が分かりません。
よく売れる商品はいつも不足しており、在庫総額のほとんどを占めているのが不活動、デ
ッドストックのはずです。
そんな在庫の原則がありながら、総額や総量で見ているのでは多少の変化があっても
良い効果にはなりません。あくまでも単品で見ること、売れた倍数を計算することが在庫
管理の基本です。
適正在庫量や発注点管理などは、過去の遺物でしょう。誰も利用していないし、何の効果
も期待できません。売れるものは足りないし、在るのは売れ残りに違いないのだから、管理
しているという錯覚は記録だけなのです。
●適正というあいまいさ
回転率や在庫金額で適正か否か、という議論になることがありますが、これもあいまいです。
どんなに複雑な商品でも製造でも、1週間かかるものは在りませんから、一日に売れる量の
7日分以上は過剰在庫です。
一日に売れる量は時々変化しますから、7日分という基準も季節や月によって変わります。
そんな事実に対して、いつも同じような物差しで測る適正量や基準など、ウソのかたまりに
過ぎません。毎日計算しているなら別ですが。
発注点や安全在庫というのもあいまいです。調達のリードタイムは発注量に依存するし、購買
の単価に影響を受けるからです。そろそろ欠品、ぼちぼち発注などというのも怠け者の考え方
ですから、BCランクになってしまった売れ筋品以外は、いつも7日~14日分以上を在庫にして
はいけないのです。
販売を急ぐ、処分を掛ける、仕掛かりを中断するなどのバッサリとした処分をしなければ、売れ
ないものが在庫になってしまうのです。
●SCMというのは在庫管理方法論
売れるものを作る、売れたら補充する、売るために在庫を持つ、というのがSCMの主張ですか
ら、常に在庫はギリギリで持つようにしなくてはなりません。
現場、製造、発注管理、資金計画すべてがつながった時にSCMが具体化したと言えるのです。
情報システムが在ればよいというモノではなく、社内の情報共有と意識の統一、在庫というクスリ
を最小限にしておくことの大切さを皆が守ったときに、SCMが動き始めるというものです。
在庫の置き方、発注の分析方法、毎日補充するという考え方は、いろいろ調べなくても空気や
感触で知ることができます。そのような考えや思想が現場にすぐに現れるからです。
在庫状況を見ると、その会社の台所が分かるし、働く人々の意欲も分かるものです。
管理の仕方も思想も現場で知ることができる。在庫を見るとは、実は怖いことなんですね。この記事へのコメント
-
-
-
-
筆者紹介
花房 陵
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。 -
「ブログ・花房 陵」の 月別記事一覧
-
「ブログ・花房 陵」の新着記事
-
物流メルマガ