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ブログ・花房 陵
成長するって、痛いんだ
2008年6月5日
●何のための物流活動か
物流がロジスティクスと呼ばれて久しいです。ビジネスを戦闘に例え、マーケティング、情報分析、商品開発、調達と販売物流を担うのがロジスティクス業務で、決してただの後方支援部隊ではありませんでした。ところが、デフレ対応で商品サービスを絞り込み、販売チャネルを制限したことで局部的な営業利益の捻出に走ってしまっては、ロジも縮小気味です。
拠点の統合、業務のアウトソーシング、マーケットの選択と集中で物流部門が掌握していたエリアも狭められてきています。販売と生産が縮小し、販路も選択された結果が、営業利益の拡大になることがあります。
80:20の原則→営業利益の80%は、20%の製品群や得意先から発生するこれの驚くところは、50:10の関係もあることでしょう。あくまでも近似値であって、正確ではありませんが、「選択と集中」の意味を理解するには自社のデータを当てはめることです。
20:300の原則→本来の収益は、20%の製品群と顧客層で300%確保できているのに、残りの80%で200%を帳消しにしているという、シニカルな原則です。「無理な製造、販売の挙げ句~~」ということを証明してしまいます。
物流活動はこれらの限定活動に終始すれば、コストも掛からない代わりに規模が小さくなってしまいます。当然、組織部門も縮小されますから、「コア業務への転換を目指せば」いいのです。物流プロフェッショナルが、調達計画、販売マーケティング業務へ転籍できれば。
●企業の成長、人間の成長
経営目的を市場の制覇、拡大、成長とすることが多いようですが、一朝一夕では実りません。短期、中期、長期にわたって作戦を練ることになります。相撲では時間と共に心・技・体の成長を心がけさせます。幼児児童は同じように、徳育・知育・体育とカリキュラムが組み立てられています。
ならば、企業の成長も同じように考えてみることができます。成長の三段プログラムですが、その時のテーマはどんなになるでしょう。
■短期目標:運営の効率化と有効性による絞り込み。ムダコストの排除と生産性向上
■中期目標:市場や顧客層へのフォーカス。より密着した顧客接点から新しいチャンスを求めます。物流性能の追加と企業間の差別化を強化した取り組み。
■長期目標:長年にわたり準備を続けてきた販売チャネル、製品群、顧客層が創造されて、企業が変態を終えます。単なる変化対応ではなく、メタモルフォーゼを表現する企業再生です。
いずれの目標にも時間と共に成長の鈍化や限界がありますから(収穫逓減法則)成長カーブはなだらかに変化します。急成長はあり得ません。このことを認識すると物流活動も改廃を繰り返すことになります。
●骨が痛い、体が痛い
人間の成長は自覚することがなかなかありません。子どもは、骨の伸びと筋肉間接の成長バランスが崩れたときに熱を出し、痛みを伴います。心身のバランスも崩れて思春期、反抗期、退廃期を乗り越えていきます。
組織も同じようにあると思います。それを自覚できるかどうかで、企業病を乗り切ることが抵抗になるのです。経営環境の変化は顧客満足や支持で計れます。組織の変態は業績の推移で見ることができます。ところが個人の技量の変化は、知識と技術に努力の影響が大きいので、個人差が最も大きく現れます。このことが、愚痴や不満になるのでしょう。
痛みを伴わない成長などあり得ないことは、自然界の法則なのに、仕事だけは変化を受け入れがたい。個人の成長はマンネリに陥りやすいものです。昨日と同じ職務は中期ではあり得ないのに、変化に対して防戦しようとあがきます。
●成長するためにしなくてはならないこと
モラルハザードが喪失されそうと言われています。宇宙船地球号を守ろうと決意したはずなのに、環境対策に手が抜けます。地域社会の一員としての最低法令さえ、自己中心の業績のために放棄されかねません。一部の不心得者として取り上げるのはあまりに短絡的です。
成長に試練や苦しい努力があるのに、痛みがあるものなのに、易き道を選択するのはどこかにひずみを隠しているようなものです。時々の名門企業失態は、こんな事かもしれません。個人の試練、組織の変化、環境顧客への対応には、時間がかかり成果もすぐには現れないものです。組み合わされてはじめて、成長軌道が描けるのでしょう。このことを古典ではたくさんの事例を引きながら、読み物として残されて来ています。徳を積むものが残り、利を求めるものが滅びる・・・とか。
●問題意識をもう一度
子どもの頃、学生時代、新入社員のときに常々言われたことが、「問題意識を持って事に臨め」とは、何のことだったのか。なぜ、という問いかけで自身と目前の事象の本質を問いただす探求心を忘れないことが、そうでしょう。
研究や開発、情報提供のように対価を求めやすい活動に比べて、物流業務は付加価値を生みません。誰も報酬を払いたがりません。ならば、なぜと銘ずる態度が必要だと思います。その作業は本当に必要なものなのだろうか、企業と個人の成長に有用なものだろうかと。
80:20の法則、20:300の法則、物流コストのABC分析などを当てはめてみると、あまりに無用な物流活動の実態があぶり出されてきます。職務だからと昨日と同じ事を繰り返すことが容易いから、習慣になっているから、他律的な職制だからと思うことは、果たして成長の過程にあるのだろうかと問うことです。
●ロジスティクス活動は欠かせないもの
製造販売の前線が局地戦に変わり、規模が縮小しても物流の重要性は変わりませんが、拠点や要員は次の大戦に備えて撤退するものです。物流部隊は一時縮小です。
それを痛みと見るなら、成長の条件です。個人の成長のためには知識、技術、努力を別の場面で求めるものです。作業者は確かに無用になります。でも、ロジスティクスは作業者の集団ではなかったはずで、そのことを忘れては辛くなります。
センターが廃止され、部門が縮小されたときに、物流マンは何を思うかという支えにエールを送りたいのです。この記事へのコメント
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筆者紹介
花房 陵
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。 -
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