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ブログ・野口 誠一
第46回:倒産者に共通する性格第12条・時間貧乏
2004年5月24日
倒産者に共通する性格の第12条は、「時間貧乏」(働き過ぎ、遊び過ぎ)である。
私は常々「忙しすぎる経営者は危ない」と言っているが、それは「忙」という字が立心偏に亡ぶと書くように、心が亡ぶからである。すなわち、一事に夢中になって心を奪われ、著しくバランスを欠くからである。
経営は何をおいてもバランス感覚である。販売力が抜群でも計数管理がずさんだったり、技術力があっても組織管理がなっていなければ、その経営基盤は危ういと言わざるを得ない。
わが会員のなかにも、遊びすぎは論外としても、働きすぎゆえに倒産を余儀なくされた例は少なくない。
たとえばある会員は、脱サラして文具・事務用品の製造販売会社を立ち上げ、わずか10年で年商8億円に伸ばした。その武器は抜群の企画力と営業力にあったが、結果的にはそれが禍した。
彼はセールスが大好きで、全国の小売店を飛び回っては説明販売に寝食を忘れ、月に1、2度しか出社しなかった。これでは管理部門が立ち遅れるのも無理はない。やがて、銀行から紹介された経理マンに手形を私的に流用されて万事休す。
また、別の会員も機械いじりが好きで、朝から晩まで工場に入り浸り、食事も工場でとるありさま。計数管理などはそっちのけで弟に任せっ放し。が、その弟が商品相場に失敗して夜逃げ。これまたあっけなく万事休す。
怠けたり遊びすぎての倒産ならば自業自得ともいえるが、一生懸命働いた結果の悪夢では、当人も納得がいくまい。しかし、やや酷な言い方をすれば、2人とも一生懸命働いたというよりは、自分の好きなこと、得意なことに没頭しただけにすぎない、という見方もできる。
そこが、経営は趣味でも道楽でもないゆえんである。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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