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ブログ・野口 誠一
第55回:倒産防止第5条・知識・知恵の吸収
2004年6月20日
「再起の条件15か条」の第5条は、「知識・知恵の吸収」である。
一つひとつの知識は、いわば点にすぎない。が、点も積もり重なればいつしか線になっていく。その線を連環させて円にしていくのが知恵である。つまり、知識が加工されて知恵となったとき、はじめて経営に役立つ。
八起会会員の一人に、鬼となって知識・知恵の吸収に努め、見事に再起を果たした傑物がいる。彼は大阪で食品会社を経営していたが、巧妙な手形詐欺に遭い、その手形が危ない筋に渡ったと知るや、その日のうちに一家4人をライトバンに乗せ、東京へ夜逃げした。
彼はさっそく仕事をさがしを始めたが、道行く人、行き交う人がみな債権者やその筋の人に見えて仕方がない。サングラスをかけ、マスクをして出かける日々が続く。そんなある日、電車の中でポンと肩を叩かれ、彼はとび上がらんばかりに驚いた。が、その人は親切に、席が空いていることを教えてくれたにすぎなかった。しかし、その日から彼は恐怖にとりつかれ、アパートを一歩も出られなくなってしまった。足が動かないのである。
ひきこもりの日々が続く。が、やがて「これでは時間がもったいない」と悟った彼は、その日から知識・知恵の吸収に鬼となっていく。毎日の新聞を隅から隅まで読み、項目別にスクラップを作り、疑問や不明のところ、あるいはもっと深く知りたい補いたいところは、奥さんに図書館から本を借りてきてもらい、片っぱしから読破していった。そのスクラップと読書ノートが100冊を超えたとき、すでに3年半が過ぎていた。彼はそろりと社会復帰を目指した。が、そのときの彼はすでに3年半前の彼ではなかった。知識と知恵にあふれ、それが活用されるときをひたすら待っていたのである。彼の再起が早かったことは言うまでもない。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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