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ブログ・重田 靖男
第4回:「とにかく今がチャンスだ」
2007年3月22日
業界2位のトーホーにとって、もちろん業界トップのフレグランは宿命的ライバルであり、全社的に「追いつけ、追い越せ」の精神が染み付いている。
そこへ数年前に、前社長が火をつけた。
フレグランが大型組織小売業への政策に手をやいて、一般小売店へのチャネル政策が滞っていたのを機会に、「打倒フレグラン戦略」指令を全営業部門に出したのだ。
「とにかく今がチャンスだ。徹底的に一般小売店チャネルへの営業を強化せよ」ということで、全社的なキャンペーンを展開し、一気にフレグランに追いつけという指令が出た。
新製品の大量投入、TVコマーシャルの増加は言うに及ばず、社長自ら有力小売店へ直接訪問し、トーホーファンを増やしていった。
前社長の指令は、それだけに留まらなかった。「特別営業開発室」という組織を設置し、フレグランの戦略情報を徹底的に収集・分析する特命業務を担当させるという念の入れ方である。
勢い、現場の営業マンにも力が入る。やや強引とも思われる売り上げ確保が横行し、生産には「絶対に品切れさせるな」といった雰囲気が続いたのである。
効果は歴然であった。トーホーの売上高は目に見えて上昇し、一時はフレグランが危機感を抱いたほどであった。
しかし、昨年、その戦略にストップがかかった。経営監査部門から、経営効率の悪化が指摘されたのである。小売店からの返品率が急上昇し、棚卸資産回転率は一気に悪化、R.O.Aは危険水準となっていた。
社長が交代し、経営企画部に経営改革の指令が出た。物流部が経営企画部と一緒に提案した、例の「サプライチェーン改革を目指して」は、その一環として策定されたものである。
提案書では、まず、在庫の徹底的削減対策を中心に、そのための店頭売上情報収集システムの必要性、生産体制の見直し、物流拠点の統合とアウトソーシングの拡大、ロジスティクス組織の必要性と営業・生産組織の見直しなど、全社に跨る改革の必要性を訴えていた。この記事へのコメント
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筆者紹介
重田 靖男
東京ロジスティクス研究所
1941年生まれ。早稲田大学理工学部卒業。
資生堂で、物流開発プロジェクト室長、物流部長、マーケティング本部長を歴任。資生堂物流サービス株式会社社長を経て、株式会社東京ロジスティクス研究所を設立。
現在は顧問として、荷主・物流企業をコンサルティングしている。
【委員】
日本ロジスティクスシステム協会企画開発専門委員長
物流技術管理士資格認定委員および講師
日本物流学会会員 -
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