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ブログ・小山 雅敬
第159回:運送会社を直撃する最低賃金大幅上昇のインパクト
2019年6月25日
【質問】当社の給与体系は、基本給を地域別最低賃金に合わせて設定しています。その他に無事故手当と家族手当、皆勤手当を支給し、時間外手当などの割増賃金を固定でつけている体系です。ここ数年、最低賃金が年々大幅に上昇しており、毎年10月に賃金を上げていますが、その負担が大きく、このペースで今後も上昇していくと、この先どうなるのか不安です。同業他社は何か対策を考えているのでしょうか。
高知県は全国で唯一、トラック運転者に産業別最低賃金910円(総重量8㌧以上最大積載量5㌧以上のトラック運転者が対象)が適用になりますが、その他の都道府県は全て地域別最低賃金が適用になります。その地域別最低賃金が先般の中央最低賃金審議会の答申によって、全国平均26円上昇(全国平均874円)になる見込みです。今後10月までに各都道府県で正式決定される予定です。これは過去最大の上昇幅であり、中小運送会社の財務に非常に大きなインパクトを与えています。
特に、最低賃金をベースにして基本給を決めている会社は、毎年否応なく賃上げを実施しなければなりません。例えば、前記質問の会社のように、無事故手当や家族手当、皆勤手当を支給している場合でも、それらの手当は最低賃金の対象として見込めないため、毎年基本給を改定する必要があります。(無事故手当は算入可能ですが、事故発生月に最低賃金割れになる。家族手当と皆勤手当は最低賃金に算入できないため)
基本給を上げれば1・25倍で残業単価が上がります。すなわち固定残業代も毎年上げていく必要があります。現在、人手不足の求人対策として、ある程度の賃上げは必要と覚悟している会社でも、燃料価格が上昇している時期に、会社の財務状況や先行きの経営見通しとは無関係に賃上げを余儀なくされることに、大きな不安を感じている経営者が増加しています。また、固定給のみで最低賃金を上回る設定にしている会社が不安を訴える傾向が強いようです。
この点、歩合給を導入している会社の場合は、歩合給も最低賃金に算入できるため、最低賃金に対して比較的余裕をもって対応している会社が見られます。歩合給を総労働時間で除した金額が最低賃金に算入できる時間給となります。また、最低賃金上昇に合わせて賃金を増額改定する場合でも、残業単価の上昇にあたえる効果は、賃上げ額の0・25倍になるため、会社の財務に与えるインパクトは抑えられます。
コンプライアンスをクリアすることは企業存続の絶対必要条件ですが、財務上のインパクトを考慮して健全経営のかじ取りをすることも必要です。時代の変化に合わせて、どのような賃金体系を構築するのか会社の判断が求められています。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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