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ブログ・野口 誠一
第146回:バブルに溺れた経営(3)
2007年11月14日
結局、Fさんは平成8年に倒産を余儀なくされるが、最後の2、3年は経営というよりも、資金繰りに振りまわされただけと言っていい。
その間、もがけばもがくほど赤字はかさみ、借金は増えていく。
そしてついに金策の泥沼に足を取られてしまった。
その第一歩は融通手形である。
仲間や同業、取引先と互いに手形を切り合っては、その場をしのいでいく。
が、それは実体の伴わないカネのまわし方にすぎない。
いつ、どこで、誰が破綻してもおかしくない。
何よりも、安易な手法だけに心が麻痺していく。
Fさんも最後には、どれだけ切ったか割ったかわけがわからなくなっていた。
第2の泥沼は街金融である。
銀行に見放されたFさんにとって、毎日のようにまわってくる手形を落とすためには、街金融に頼るしか術がなかった。
が、そこは地獄の一丁目である。
Fさんが借りたのはたったの100万円。
が、その金利はなんと1週間に30万円(年利1500%)。
これでは、その30万円を払うために次の街金融に走らなければならない。
こうしてFさんは街金地獄にはまっていく。
しかし、こうした手法が長続きするはずもない。
ついにその日がやってきた。
1日だけ待ってくれるように街金へ頼みに行ったFさんは、その場で監禁されてしまった。
財布をさぐられ、鞄の中まで調べられ、本当にカネがないと知るや、あとは延々と脅迫である。
入れ替わり立ち替わり怒鳴り散らし、机を叩き、椅子を蹴とばす。
はては奥さんに電話を入れ、「何か貴金属はありませんかねえ。指輪でも何でもいいんですよ」と、口調こそ丁寧だが、何か金目のモノを持ってこない限り、亭主は帰さないという脅しである。
この日、Fさんが解放されたのは深夜の1時、15時間の監禁である。
そしてFさんの心が決まった。
(つづく)
2007年11月14日 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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