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ブログ・野口 誠一
第147回:バブルに溺れた経営(4)
2007年11月21日
監禁15時間の恐怖をたっぷりと味わったFさんは、即座に夜逃げを決意した。
翌日の夜、身の回りのモノだけを車に積んで、奥さんと13歳になる娘とともに、千葉県の友人を頼って逃げた。
道々、さすがにヘッドライトのなかに涙がにじんだ。
友人の世話でアパートを借りることはできたが、日々の生活は待ってくれない。
Fさんはすぐさま新聞広告でさがしたアイデア商品の販売に乗り出した。
歩合制で1か月1日の休みなしに働いても15万円程度にしかならなかった。
これでは到底、生活を支えられない。わずか4か月で辞めざるを得なかった。
Fさんが次に始めたのは本の販売である。
1冊3万6,000円もする本で、1冊売ると1万円もらえる仕組みになっていた。
が、その販売方法は政治家の名をかたって銀行や企業に売り込むもので、とてもまともな仕事とは思えなかった。
Fさんはその仕事も1年足らずでやめた。
その後も麻雀屋の店員、建設現場の下働き、ポルノビデオのチラシ配りと、生活を支えるために何でもやった。
本当はまともな仕事、まともな会社に勤めたかったが、なにせ世はデフレ不況。
新卒でも就職「冬の時代」だったのだから、51歳のFさんにまともな仕事など、あろうはずもなかった。
それでも一家3人の生活は待ったなしである。
何よりも辛かったのは、なに不自由なく育てた娘に、新しい服ひとつ買ってやれないことだった。
そんなある日、リフォーム会社の営業社員募集の広告を見つけた。
年齢は40歳までとなっていたが、Fさんはそこを熱意で押し切り、ついにまともな仕事にありついた。
(つづく)
2007年11月21日 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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