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ブログ・野口 誠一
第164回:ウナギのビジネス
2008年4月11日
人間万事塞翁が馬である。どこでどう運命が変わるか誰にもわからない。以下はHさんとウナギの大将のやりとりである。
「大将、どうしてこんなにも売れるんだい」
「浜松はウナギでもってるんだ。いくらでも売れるよ。ただなあ、おれ1人じゃどうにもならねえ。このスーパーは、ほかにもチェーンがいっぱいあるんだが、そこまで手が回らないのさ」
「それなら学生のアルバイトを使えばいいじゃないか」
「学生? なるほど、その手があったか。あんた、それをやってくれないか」
こうしてトントン拍子に話がすすみ、学生も集まり、浜松だけでなく熱海、伊豆、御殿場へも進出、ウナギに加えてヤキトリにまで手を広げ、売りまくり儲けまくっていく。
が、その絶好調も3年と続かなかった。かつてのHさん同様、ウナギの大将も湯水のように金が入るようになると、金銭感覚が麻痺してしまったのである。すっかり競艇に入れ上げ、サラ金や街金にまで手を出したあげく、夜逃げしてしまった。
かくしてHさんは元の倒産者に戻ってしまったが、その手にはウナギとヤキトリビジネスのノウハウがしっかりと握られていた。そこから彼の再起が始まっていく。
スーパーやデパートに渡りをつけ、口座を新設してもらい、新たな会社組織としてスタートを切った。平成九年のことである。
目下、彼の会社は出店数29、年商21億円と順風満帆である。むろん、その陰に彼の倒産経験と、万巻ならぬ千巻の経営書読破があずかっていることは言うまでもない。
Hさんはバブルに翻弄され、数奇な運命をたどった1人である。が、再起なったいまは、その経験を経営に生かし、無借金経営を貫いている。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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