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ブログ・野口 誠一
第167回:ニュービジネスの成功
2008年5月2日
昭和54年、Kさんはついに念願のコンピューター情報処理会社「エス・アイ・エス」(東京)を立ち上げた。
SISはセールス・インフォメーション・システムズのイニシャルである。資本金500万円の半分はA電気販売チェーンのY社長に出資を仰いだ。このときKさん、44歳。
ニュービジネスが市民権を得るには多少時間がかかる。スタートして2、3年は鳴かず飛ばずだったが、昭和57年ごろからグイッとテイクオフし、競争相手がいないこともあって、毎年うなぎ登りに業績を伸ばした。
Kさんの商品はソフトだから原価や仕入れというものがない。売り上げ即粗利のようなもので、きわめて利益率の高いビジネスである。
彼がまたたく間に年商5億円、スタッフ20人を抱えるまでに業容を拡大したとしても、驚くにはあたらない。
やがてKさんのデータベースは中小企業事業団や東京商工会議所に採用され、話題となっていく。新聞やテレビでも紹介され、Kさんは一躍、時代の寵児となっていく。
しかし、ニュービジネスは有望であればあるほど、新規参入が相次ぐ。Kさんのデータベースも例外ではなかった。
そのころ、Kさんの得意先は大方がA電気の系列販売チェーンで、その数は東京で20─30店、全国で60─70店に達していた。
なかには年商1億円超のユーザーもかなりあった。つまり、それらのチェーンはKさんのデータベースを使って顧客管理やダイレクトメールを出していたのである。そのコスト(Kさんへの支払い)をトータルすると、ゆうに数億円にも及ぶ。
メーカーのA電気はそこに目をつけた。自社系列の販売店なのに、Kさんの「SIS」に年間数億円も吸い上げさせることはない…と考えたとしても無理はない。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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