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ブログ・野口 誠一
第180回:大手との生存競争
2008年8月1日
最初に現れたライバルは、近くの衣料品中心の大型スーパーである。Tさんの食料品スーパーが繁盛していることに刺激されたか、4階建ての1階部分を、すべて食料品売場に改装してしまったのである。
これはTさんにとって強烈なアッパーカットになった。なにしろ向こうの売場面積は3倍、しかもTさんの地下に対しての1階である。とても太刀打ちできようはずがない。
案の定、3号店の業績はガクンと落ちた。日に300万円内外あった売り上げが、たちまち40万円まで下がってしまった。これではどうにもならない。
3号店は1日の売り上げが100万円ないと維持できないのに、40万円では焼け石に水である。Tさんは必死に挽回策を講じたが、それでも1日60万円内外が精いっぱい、損益分岐点には遠く及ばない。1号店、2号店の収益でなんとかカバーできてはいるものの苦しい経営が続く。
そんな苦境のところへ、また新たなライバルが現れた。今度は近隣のデパートが、ワン・フロアをすべて食料品売り場に改装してしまったのである。
つまり、デパートといえども「食料品を扱う時代」に入りつつあったのである。そのうえさらに、ちょっと離れたところにダイエーまでが進出してきた。そして壮絶なチラシ合戦が始まっていく。
これはただの販売競争ではない。食うか食われるか、生き残りを賭けた壮絶な消耗戦争である。体力、資力のないところから消えていかざるを得ない。
こうなっては地場の中小スーパーはひとたまりもない。ようやくTさんの耳にも、時代の足音が聞こえるようになってきた。大資本スーパーが中小を蹴散らし、呑み込んでいく時代に突入したのである。
もはや中小に明日はない、転進をはかろう、と決意したとき、彼の経営は終わったと言っていい。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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