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ブログ・野口 誠一
第185回:先見力と対応力を強化
2008年9月5日
Nさんの苦境は続く。熾烈な過当競争から売り上げが激減していくなかで、店舗を拡大した借金がボディブローとなり、ジリジリと経営体力が奪われていく。
やがて資金繰りに追いまわされるようになり、金融機関は言うに及ばず、親戚、サラ金、高利貸しの間を駆けずりまわる日々が続く。
しかし業績は落ち込む一方で、ついに平成9年10月、雑誌・書籍をストップされた。不渡りを出したのは、その10日後のことである。その時点でNさんの借金は1億8000万円に達していた。
追いつめられたNさんは生命保険で借金を返そうと自殺を決意。その夜、ひそかに買い込んであった農薬をふところにフラフラと家を出た。が、その歩きがよほど尋常でなかったか、巡回中のパトカーに職務質問されて万事休す。
その翌日、八起会へ駆け込んできたが時すでに遅く、倒産を余儀なくされた。
Nさんの倒産のケースは、やや酷な言い方だが、明らかに先見力と対応力の欠如といっていい。真面目で一途な働きぶりを否定するわけではないが、経営者ともなれば、それだけでは十分と言えない。
たとえば、もう少し問屋や同業仲間と深く付き合っていたなら、業界の動きや情報もいち早く入手できたはずだし、ライバルの出現に対しても前もってもっと別の対応ができたはずである。
しかし倒産後、Nさんはすぐにそのことに気付いた。雌伏すること5年、世の中の動きと業界の動向を的確に把握すべく、研鑽に努めた。そしてチャンスがめぐってきた。
市がシャッター街と化しつつある一画にテコ入れするのに乗じて、再び書籍・文具店をオープンしたのである。
むろん、町づくり三法によって郊外型大型店の出店が規制されつつあることは視野に入っている。目下、Nさんの経営は順調である。 -
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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