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ブログ・高橋 聡
第157回:給与体系変更の留意点(5)経営理念との連動
2019年8月14日
給与を変更する際に検討すべき事項や留意点、必要な手続きや実務上の注意点について紹介していきます。給与体系を変更する場合に検討すべき事項には、表に記載したおおむね5つの観点【図①】が必要となります。今回は「経営理念との連動」について説明します。
給与変更を検討する際に「経営理念との連動」を検討する必要があります。経営理念とは「創業時の思い」「先代から引き継いだ経営哲学」「社是」「経営目標」といったキーワードに置き換えられます。運送業はドライバーを活用し、荷主との契約に従い「荷物」をA地点からB地点に移動します。トラックや荷物の種類、運送契約の形態により差はありますが、サービス内容やビジネスモデルなどに大きな違いが作りにくいことが業種特性です。
しかし、例えば物流加工、配送サービス、安全、あいさつ・マナーなどに関して自社にしかできない特色的な取り組みを行うことは可能です。このような特色的な行動様式を会社の「経営理念」として掲げている会社は少なくありません。「経営理念」は、その会社の営業・人事・運行管理など全ての事項の基礎となる原則的な考え方で、言い換えれば「当社は、この理念を達成するために営業活動を行っている」「理念を実現するために地域社会に存在している」ということができます。
経営理念の具体例として「あいさつに関しては、どこにも負けない会社」「月間無事故・無違反記録継続を追求する会社」「スポット受注を積極的に受ける、困ったときに頼りになる会社」「3PL・物流サービスに特化する会社」といったものがあります。もともとサービス内容に差がつけにくい事業だからこそ「経営理念」は重要です。「経営理念」が明確化されており、人事・給与制度などに生かされていること、月に1度は管理者と運転職が面談し経営理念の順守状況を確認すること、万が一理念に反する行動があれば、それを修正していく、といったPDCAサイクルを回すことは人材の募集・採用・定着、人材育成につながっていきます。
さて、給与制度を変更する際に「経営理念」を確認し、例えば「あいさつ・マナー」の実施状況を確認し支給する手当、デジタコ点数や安全運行をチェックし支給する手当、スポット業務を積極的に対応したドライバーに支給する「スポット歩合給」、会社行事への参加や現場改善提案を行った場合に支給する「提案手当」などの導入を検討することができます。
給与改定に伴い手当種類を検討する場合には「属人的手当」から「仕事的手当」に着目する会社が増えています。
有給取得月に不支給とすることはできない「皆勤手当」、支給ルールの設定が難しい「住宅手当」、妻帯者と独身者の線引きが難しい「家族手当」など属人的手当を支給しているのであれば、無事故手当、評価手当、デジタコ手当など、自社の「経営理念」を反映させた仕事的手当の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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