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ブログ・野口 誠一
第207回:宅配会社の設立
2009年2月13日
Sさんは懸命に働き、家族に仕送りをしながら半年が過ぎた。が、常に自分の生活のためにも、家族への仕送りのためにも、より多くの収入を得たいという気持ちに変わりはなかった。
そんなある日、新聞でホテル支配人の募集広告を見つけた。給料は30万円である。彼は1も2もなくとびついた。が、そこはビジネスホテル兼ラブホテルで、支配人とは名ばかりで従業員は彼1人にすぎなかった。
部屋数は30と少なかったが、会計からベッドメイクまですべて1人でこなさなければならず、慢性的な睡眠不足から、朝起きると枕が鼻血を吸っていることもしばしばあった。が、彼は歯を食いしばって耐え、休日にはチリ紙交換で1、2万円の日銭も稼いだ。
やがて転機が訪れた。車を持ち込んでの宅配なら月4、50万円になるという。Sさんは爪に火をともすようにして貯めた金で車を買い、宅配を始めた。最初は土地勘もなく大した収入にならなかったが、半年後には月40万円を超えた。
そして1年後、1軒家を借りて個人で宅配を請け負うようになり、ようやく収入が安定した。彼はその金を少しずつ身内や友人から借りた借金の返済に当てていく。そのほかの債権者とも、負債額の5%返済ということで話がついた。
平成12年、ようやく倒産、夜逃げのうしろめたさから解放されたSさんは、晴れて家族を栃木に呼び寄せた。夜逃げから実に8年の歳月が流れていた。
家族との再会、同居を機に、Sさんは思い切って「S宅配株式会社」を設立、再び経営者に返り咲く。が、かつてのようなダボハゼ社長ではない。しっかりと地に足の着いた真の経営者である。
彼の会社は現在、資本金3000万円、従業員6人(契約社員34人)、年商4億4000万円と、順風満帆である。そこには努力によって運命を変えた人の姿がある。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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