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ブログ・野口 誠一
第227回:決意した会社整理
2009年7月3日
平成3年、Fさんは会社整理を決意した。赤字がかさみ、借金だけが増えていくなかで、これ以上は無理と判断してのことである。その時点で、Fさんの負債は4億円ほどに達していた。
一方、資産のほうは3億円の自宅と1億円の工場しかない。計算上はツーペーになるが、自宅と工場は購入したときの価格だから、いくらで売れるかわからない。すでにバブルははじけ、不動産の流動性にかげりが生じつつあった。
Fさんはメーンバンクに相談した。メーンバンクとて一円でも多く回収したいから、放っておけない。「どうしても会社を整理するとおっしゃるなら、お手伝いしましょう。自宅と工場の売却はお任せ下さい。できるだけ高く売ってさしあげますよ」ということになり、Fさんの会社整理は銀行主導で始まった。
そして平成3年暮れ、自宅が2億5000万円、工場が6000万円で売れた。その3億1000万円で金融機関や手形関係、それに大どころの借金はほぼ片付いた。
しかし、小さな負債が合わせて12社、4000万円ばかり残った。が、幸い機械類が約2000万円、在庫が1000万円ほどあり、私的整理に耐えられると思ったFさんは、4000万円の負債のうち3000万円を占める筆頭債権者に詫びを入れ、私的整理を頼んだ。
すると、筆頭債権者は「わかった。私が債権委員長となってみんなを説得しよう。みんなだって、あなたに儲けさせてもらったこともあるんだから、きっとわかってくれるよ」と、2つ返事で引き受けてくれた。
Fさんの私的整理は何の問題もトラブルもなく、スムーズに運んだ。上手な整理と言っていい。が、それがかえってFさんを苦しめ、再起を遅らせていくのだから皮肉としか言いようがない。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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