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ブログ・野口 誠一
第270回:人生に失敗していない
2010年6月4日
「いますぐに北海道へ帰って、債権者のみなさんに頭を下げ、再建をお願いしなさい」
それが野口会長の結論でした。しかし、私は大いに不満でした。やっとの思いで夜逃げしてきたのに、いまさら帰るなんて到底できません。会長は都会に住んでいるから、すぐに帰ったほうがいいと簡単に言うが、田舎には都会の人などにわからない複雑な事情もあるのです。
私は納得できませんでした。そんな私の不満を見抜いたのでしょう。会長は「今日はこれで帰って、もう一度ゆっくり考えてみなさい」と言われました。そして、帰りがけに「今日はこれを飲んで、ゆっくり休みなさい」と、日本酒を1本下さいました。
その後も何度か八起会を訪ね、会長ともいろいろ話し合いましたが、私はどうしても帰る決心がつきません。そんな私に会長がこう言われました。
「あなたは事業に失敗しただけであって、人生に失敗したわけではありません。必ず再起できます。あなたより苦しい立場から再起した会員は大勢います」
私は会長のこの言葉に、目からウロコが落ちました。私はそのときまで、自分の人生は終わった、すべてに失敗してすべてを失った、そう考えていました。会長に、事業には失敗したが人生に失敗したわけではないと言われ、はじめてそのことに気付き、ようやく北海道へ帰る決心がつきました。
私は八起会に甘えていました。八起会へ行けば借金取りから身を守ってくれる、借金を免れる方法を教えてくれる、そう思っていました。しかし、そんな虫のよい話があろうはずもありません。倒産者や困っている人を黙って受け入れてくれる、話を聞いてくれる、精神的支えになってくれる、そして進むべき方向を教えてくれる、それが八起会だったのです。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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