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ブログ・野口 誠一
第275回:テーブルの上に遺書
2010年7月9日
居間のテーブルの上に遺書がありました。中身を見る余裕なんてありません。口の中がカラカラに乾いて、心臓がドキドキ高鳴り、頭が割れそうになりました。もちろん警察にも届けましたが、事件性がないことには警察も動いてくれません。かかるはずのない携帯電話をかけ続け、遺書を見ると冒頭の文面です。もう頭の中が真っ白になり、ただただ無事を祈るしかありませんでした。そんな時間がどれくらい過ぎたかいまでも思い出せません。やがて電話が鳴り、「警察から?」と思いながら受話器をとると、無言です。
でも、間違いなく主人の吐息です。もう半狂乱になりそうでした。無事でいてくれた。生きていてくれた。よかった。ありがとう、ありがとう。涙があふれて止まりませんでした。電話の向こうで、主人の声も震えていました。なんとか冷静になり、居場所をつきとめ、迎えに行きました。
その後、冷静に会話のできない状態が何日続いたかわかりません。ようやく主人もわれに返り、私の知り合いの弁護士に相談しました。でもやはり、破産するしかないとの結論で、しばらく身を隠したほうがいいとのことでした。主人はなかなか決心がつかないようでしたが、何がなんでもと説得し、私もいっしょに逃げる覚悟を決めました。ただ、単に逃げるのはどうしてもイヤでした。将来はまた光のある人生を送りたい、その思いを捨てさることができませんでした。もちろん、債権者のみなさまには申しわけないと思いましたが、このまま出口のないトンネルに入るのは耐えがたかったのです。
そして友人にかくまってもらいながら、法的解決の準備に入りました。でも、負債額が大きく、すぐには免責を受けられない状態でした。そんな不安だらけの日々のなかで、一冊の本に出会ったのです。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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