-
ブログ・野口 誠一
第276回:「再起」に大きなミゾ
2010年7月16日
その本は野口会長の著書でした。そこには経営の失敗例がたくさん書かれてあり、そのすべてが主人に当てはまることばかりでした。私は即座に、この人に会いに行こうと心に決めました。会って何かいいことがあるだろうなどとは考えもしませんでした。ただ、この人に会って話を聞いてもらいたい、その一心でした。イヤがる主人を説得し、会長のもとに伺いました。そしていままでのこと、これからのこと、心配や不安を思いのたけ話しました。会長は最後まで私の話を聞いてくださり、こう言ってくださいました。
「倒産は経営上の失敗であって、人生の失敗じゃありません。夫婦二人で頑張れば、必ず再起できます」
この一言に、私たちは目から鱗が落ちるような衝撃を受けました。そして夜逃げしてきて住む当てもない私たちに、不動産業を営む八起会の会員の方にアパートを世話していただき、会長には保証人にもなっていただきました。なんと、ほんの2、3時間前に出会ったばかりの、夜逃げしてきた私たちのために……です。正直、驚きました。主人も当時は人間不信に陥っていましたから、「世の中にこんな人がいるなんて」と驚きを隠せませんでした。
こうしてなんとか住む場所を確保でき、次は職さがしですが、そこも会長が会員の方が営むお店を紹介してくださいました。それも、夫婦二人で働ける場所をです。会長には、感謝という言葉に盛れないほどお世話になりました。その後、私たちはいくつか職を替えながら、再起へ向かって頑張りました。でも、私と主人の間には、「再起」に大きなへだたりがありました。主人はまた事業を始めることが、社長に返り咲くことが、再起だと思っていたようです。私たちの間にミゾができていきます。この記事へのコメント
-
-
-
-
筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
「ブログ・野口 誠一」の 月別記事一覧
-
「ブログ・野口 誠一」の新着記事
-
物流メルマガ