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ブログ・野口 誠一
第326回:エゴ丸出しの祈りに奇跡
2011年11月7日
自業自得、因果応報とはいえ、焼け火箸で搔き回されるような苦しい日々が続く。溺れる者は藁をもつかむ。水面下でもがく者は、ときに突飛な、不可解な行動に出ることがある。私もその一人だった。
ある日、気が付いたら仏壇屋の前にじっと佇んでいた。仏壇を見たかったわけでも、欲しかったわけでもない。自然に足が止まり、動かなくなったのである。どのくらい佇んでいたのだろうか、やがて店員が店を片付け始めたところで、ようやく足が動いた。私は店内に飛び込み、「仏壇をくれ」と叫んでいた。
仏壇には掌を合わせるしかない。その日から私は毎朝、毎晩、仏壇の前に座って掌を合わせた。で、何を祈ったかといえば、「毎日が辛い、苦しい、助けてくれ。一日も早く勤め人から解放してくれ。元の社長に戻してくれ」と、エゴ丸出しの祈りばかりである。
いまから思えば汗顔の至りだが、当時の私は苦しい日々から逃れたい一心で、自分の祈りがいかにあさましいか、馬鹿げているかなど、まるで考えも及ばなかった。それほど精神的に追い詰められていたと言っていい。ただ、いかに身勝手な祈りであろうと、仏壇の前に座っている間は気持ちが和み、苦しさから解放される。私は憑かれたように毎朝、毎晩、祈った。そして奇跡が起きた。ある夜、仏壇がモノを言ったのである。
「お前は苦しいという。そして毎日のように不平を鳴らす。が、お前も社長だったことがあるはずだ。そのとき、社員たちはみんな今のお前と同じだったか。そうでないことは、お前が一番よく知っているはずだ。いまは立場が変わっただけのこと。お前を苦しめている者など誰もいない。お前は自分で自分を苦しめているにすぎないのだ。目を開け。そして周りを、世の中をよく見よ」この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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