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ブログ・野口 誠一
第368回:即時の倒産は免れ
2012年7月9日
メーン取引のコンビニから増便とリードタイムの短縮を要請されたことは、取引停止を宣告されたも同然でした。どのように努力しても不可能なのです。要請は朝の9時に発注した商品を、午前11時までにコンビニの首都圏センターへ納入せよ、というものでした。これは到底不可能です。
生産だけでも3、4時間はかかるし、資材の準備から原料の仕込み、トッピングなどの一連の作業を加えれば、完成品として出荷するまでに5時間ぐらい要します。さらに、配送だけでも栃木から首都圏センターまで2、3時間はかかります。
結局、このコンビニとの取引はあきらめました。その売り上げ減は約5億円(売上構成比45%)です。これで万事休す。倒産寸前に追い込まれました。が、捨てる神に拾う神で、思いがけないビジネスチャンスが舞い込みました。
残った2社の1社から東京・神奈川に加え、静岡エリアにも納入できるように取り計らってもらったのです。さらにもう1社からは、従来の調理麺のほかに、焼きそばとパスタ類を取扱商品に追加してもらいました。この2社の売り上げ増4億円。
こうして幸運にも、5億円の売り上げを失ったところへ4億円の補填ができました。といっても1億円のマイナスですから、苦しい経営がより苦しくなったことに変わりはありません。ただ、即時の倒産だけは免れることができました。
実は、当社を窮地に追い込んだリードタイムの短縮要請は、業界では日常茶飯事です。消費期限が短く、売れ行きがその日の天候に左右される商品は、コンビニ側としても廃棄ロス、逆にチャンスロスを避けたいために、過酷な要求を突きつけるのです。それがいま、大きな社会問題になっています。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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