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ブログ・野口 誠一
第398回:メーンバンクが破綻
2013年2月4日
(以下、Aさんの体験発表である)
半年ばかり前のことです。私は倒産と自殺の二つの危機に、ほぼ同時に見舞われました。きっかけはたった一通の封書でした。埼玉地方裁判所から送付されてきた通知書のなかに、「担保不動産競売開始決定」の知らせが入っていたのです。早い話が、私が金融機関に設定した担保物件を「競売にかける」という知らせです。
この知らせは何の予告もなく、突然もたらされました。いわば青天の霹靂(へきれき)です。融資条件も担保条件も変わっていないのに、どうしてこんなことになってしまったのか。原因は私どもというより、私どものメーンバンク側にありました。長年、T信用金庫をメーンバンクとして取引をしてきましたが、そのT信金が破綻を余儀なくされてしまったのです。
私どものサッシ工場は年商3億円の規模と、T信金との取引でそれなりにまわっていましたが、信金が破綻となれば、たちまち資金繰りに窮してしまいます。それどころか、その債権が整理回収機構にでもまわろうものなら、たちまち紙切れ1枚で競売にかけられてしまいます。事実、私どもに対するT信金の債権7300万円は整理回収機構に移り、有無を言わせぬ競売通知となってしまいました。
これで万事休す。資金繰りに穴があいたら、中小企業は倒産するしかありません。ただ私の場合は、すんなりと倒産を受け入れるわけにいかない事情があったのです。そのためにずいぶんと苦しみました。夜は眠れず、食事は喉を通らずのなかで、ついには「死んで詫びるしかない」というところまで追い詰められました。
(Aさんが倒産を受け入れられないわけとは何か、それは次回)この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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