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ブログ・野口 誠一
第397回:新しいタイプの倒産
2013年1月28日
Aさんと私は徹底的に話し合った。もともとAさんは埼玉県下にサッシ工場を持つ経営者であり、八起会とは何のかかわりもない。たまたま相談に来ただけで、体験発表を受けねばならない義理もない。むろん、私にしたところで、初めての相談者にそのような依頼をしたのは、後にも先にもその時が初めてだ。
私が失礼をもかえりみず、Aさんに体験発表をお願いした理由は二つある。一つは、相談に見えたときAさんはすでに、「自殺するしかない」と思い込んでいたことである。これは私たちにも経験があるだけに、到底、他人事ではなかった。実は「死にたい」「死ぬしかない」と駆け込んでくる相談者にかける言葉は、それほど多くない。私にしてからが、「せめてもう1日、生きてみましょうよ」と言うしかない。明日になれば、いくぶんなりとも苦しみがやわらぐかもしれないし、心模様が変わるかもしれない。「明日は味方なり」は私の座右の銘である。
私はAさんの顔に刻まれた死神の影を見逃さなかった。体験発表の依頼は、いわばAさんの命を明日へつなぐ窮余の一策でもあった。もう一つの理由は、Aさんの倒産危機に整理回収機構(RCC)が絡んでいたことである。これは新しいタイプの倒産と言っていい。これから増える可能性もあり、八起会としても勉強しておく必要があった。Aさんはその好例であり、失礼とは思いつつも体験発表をお願いした由縁である。
私はAさんに八起会の歴史と使命を語り、対外的には倒産110番を通じた無料相談、対内的には会員の再起を目指した研修会、その二本柱を中心に活動を続けている旨を説き、体験発表の快諾を得た。(こうして実現した異例の体験発表だったが、その内容は次回以降へ)この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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