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ブログ・小山 雅敬
第93回:中小運送会社の経営改善のポイント
2016年12月4日
【質問】わが社は社員数50人の運送会社です。昨年、先代(実父)から経営を引き継ぎましたが、古い社内風土に違和感があり、早期に改善に向けた取り組みを始めたいと考えています。運送会社の経営改善は一般的にどのような観点で進めていけばよいでしょうか。
経営改善に取り組む際は、現状を客観的に見て具体的に問題点を抽出し、改善すべきポイントを掴むことが重要です。しかし、現状分析の作業は煩雑なため、日常手を付けることが少ないものです。結果として根本的な問題点を改善しないまま直面する課題のみに目が行きがちです。特に、中小運送会社では社長自らが作業をしなければならず、なかなか時間が取れません。
そこで予め次の五つのポイントに絞って検討を進めていくと効果的です。改善の観点は(1)経営理念(2)財務改善(3)営業力(4)労務管理力(5)組織の見直し、の五つに絞ります。そのうち中小運送業が勝ち残る最大のポイントは営業力の強化と労務管理力の二つにあります。営業力強化とは新規開拓や対荷主との交渉だけではなく、経営戦略、営業方針を含む広い意味での営業展開力です。労務管理力とはコンプライアンスだけではなく、人材採用力、定着力、生産性向上力、社員育成力などを含みます。経営理念や財務改善、組織の改善は会社の経営力を支える根本の土台だと考えてください。
簡単に改善ポイントを列記します。まず経営理念です。経営理念や経営方針は社内外に宣誓する経営改善のスタートになります。経営理念は経営環境の変化や世代交代に応じて見直すことが可能です。古い体質を変えたい時に新しい経営者の考えを打ち出す必要があります。
次に財務改善です。運送業の場合は三つの観点で検討します。通常の財務諸表分析(いわゆる財務比率による分析)、運送原価分析(車両別、荷主別、個人別)、運行効率の分析(稼働率、実車率、積載率)の三つです。特に限界利益が出ていない業務、その他利益が芳しくない車両や業務の原因の洗い出しが重要です。大事なことは正確に計数で把握することです。
組織の見直しは大きく三つに分けられます。(1)グループの組織改編(ホールディング化、分社など)(2)会社内の組織改編(3)班組織の新設など新たな管理組織の創設、の三つです。組織の作り方は会社の活力を大きく左右します。管理者の選定や育成も考慮して実行します。経営改善は会社の事情により、どうやるか、どこまでやるかが異なりますが、一度ゼロベースで「あるべき姿」を描いてみると良いと思います。
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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