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ブログ・青木 正一
第82回:やっぱりつらいよ、後継者選び
2007年4月1日
私は先日、ある経営者の墓参りに行った。生前、大変お世話になり、自分の息子のように話を聞いていただいた方だ。
この経営者は中堅物流会社のナンバー2にまで昇り、そこから脱サラをし、1代で年商60億円の物流会社を作り上げた。しかし、最近では競合他社の価格競争や荷主の運賃値下げなどが大きく経営に響き、赤字経営に陥っていた。借入金も増え、債務超過にまで至っていた。
心労も大きかったのだろう。数年前に内臓疾患を発病し、最近では病状は安定した状態であったのだが、年明けに病状が一変し、天国へ行ってしまったのであった。その直近までハードワークをこなしていた。この会社は完全に亡くなった社長の色濃いワンマン経営であった。営業や荷主との交渉、値決めなど、すべて本人が対応し、その後の運営面は常務に任せていた。
墓参りの際、この社長の息子に会うことができ、色々な話をした。この息子は大学卒業後、関東の中堅物流会社に勤め、後を継ぐことを前提に2年前、父が経営する物流会社に入社した。現場から事務職に上がるとき、ワンマン社長を囲む古参幹部と衝突し、昨年、父の会社を辞めたのであった。
当時の状況を聞いてみた。年商60億円クラスともなると物流会社としては大きく、管理職が官僚的になり、新たな挑戦や改革とは無縁の保身に回り、現場の提案がなかなか聞き入れてもらうことがなかったという。そして、父の存在が大きすぎ、比較されることはもとより、後を継ぐことは不可能と判断したとのことであった。そんな中、息子は父に「会社はあとどれくらい持つのか」と物心ついた頃から聞いていたという。
バブル期は「全然、大丈夫だ」との返事が帰ってきたが、最近では「あと10年は持つ」「あと5年がやっと」と次第に具体的な年数が入ってきたと言う。事業承継はタイミングが重要という。負の財産を清算してバトンタッチする会社が多いが、今の物流業界であれば、それは難しい。しかし、この社長の寿命を短くしたのは、わずかな望みであった息子の退職であったに違いない。この記事へのコメント
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筆者紹介
青木 正一
株式会社日本ロジファクトリー
1964年11月13日生まれ、京都産業大学経済学部卒。
学生時代に数々のベンチャービジネスを行い、卒業後、ドライバーとして大阪佐川急便入社。1989年株式会社船井総合研究所入社。物流開発チーム・トラックチームチーフを経て、コンサルティングでは対応できない顧客からの要望を事業化するという主旨で1996年“荷主企業と物流企業の温度差をなくす物流バンク”をコンセプトに、物流新業態企業「日本ロジファクトリー」を設立。代表取締役に就任。
主な事業内容として「現場改善実務コンサルティング」「物流専門人材紹介(ロジキャリアバンク)」「物流情報システム構築サポート(ロジシステムデザイン)」を行なっている。
また、物流業界におけるコンサルタントの養成、人材の採用、育成、M&Aといったプロデュース業務も手掛けている。
最近では、産業再生機構からの要請を受けるなど、「物流再生」に力を入れている。 -
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