深刻な人材不足である今の時代には、業界未経験者を採用し、高速かつ高確率で戦力化できない企業は生き残れません。どの企業もよい人をより厚遇しますし、そもそも経験者だけを狙っていてはターゲットの母数が足りないからです。
　「他社が育てた人でしか商売できない会社はジリ貧になる」のは間違いないと言えます。ですから、逆に「未経験者の方が他社の色がついていないからよい」と捉え、戦略的に企業の体制を変えていくくらいでちょうどよいのです。
　弊社主催の物流企業経営研究会「ＦＵＮＡＩロジスティクスソサエティ」の会員企業で、大型・長距離を主要事業とするＮ運輸は、そういった状況を見越し、ターゲットをドライバー未経験者に絞った募集広告を展開しています。

　広告のタイトルは、ずばり「Ｎ運輸なら６か月で一人前の大型トラックドライバーになれます」。サブタイトルとして、「なんと、現ドライバー１１０人のうち９９人（９０％）が、ドライバー経験なしで入社した人たちです！」という文章が添えられています。また、メーンビジュアル（集合写真）の上には、〝ど素人大募集〟と大きくうたわれています。
　ここまで打ち出せば、同社が本気で経験者ではなく未経験者を求めていることが求職者に伝わるでしょう。実はここがポイントの一つで、〝未経験者歓迎〟と書きながらも、本当は経験者の方が欲しいと思っている企業はメッセージに一貫性がないため、すぐに本音がばれてしまい、広告が当たらないのです。
　Ｎ運輸の広告には「なぜ、未経験者がトラックドライバーを目指すならＮ運輸なのか？」と題し、未経験者にとってのメリットが次のように列挙されています。
　①免許取得支援制度がある②新人育成システムが充実③先輩社員の９割が素人で入社④入社時から全員正社員で採用⑤自社整備工場が強力サポート⑥自社洗車機で効率アップ⑦積み込み・荷下ろし応援部隊が頼もしい⑧８割以上固定仕事で習熟が早い
　Ｎ運輸には、たくさんの応募～入社があり、順調に成長し、定着しています。ぜひ、ベンチマークしていただければと思います。
（船井総合研究所・橋本直行）
☆船井総研が運営する物流ビジネス情報サイト「http://www.ecologi.net」
※記事は15年5月の記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。