近年、入社後のミスマッチを防ぎ、定着率を上げるために、体験入社制度を採り入れる企業が増えてきました。人材紹介や人材情報サービスを提供しているエン・ジャパン社でも「体感転職制度」というものを導入し、早期退職への抑止力を高めています。
　同社では、中途採用の選考過程で、可能な限り状況をオープンにし、いいことはもちろん、ネガティブな情報も隠すことなく公開し、入社後のミスマッチ防止に最大限の配慮をしています。それでも離職者が出てしまうことがあり、さらなる改善策を模索した結果、体感転職制度を採り入れました。社員と一緒に朝礼から終業まで、同じように働いてもらい、どのような仕事内容か、職場環境かを肌で感じてもらうのです。実際に、この制度を採り入れてから、定着率は２０％近く改善したそうです。

　わずか１日だけ、また数日であっても、仕事の流れや労働環境を認識してもらうには非常に有効です。また、この入社体験は、求職者にとってメリットがあるだけではありません。受け入れる側の企業にとっても、一日一緒に働いてみることで、面接だけでは見極めることが難しい、その人の素の部分が見えやすくなり、内定を出すかどうかの判断材料として生かすことができます。企業側からしても、ギャップをなくすことができるのです。
　さらに、同社では入社前に情報をオープンにするだけでなく、退職社員を再雇用する「ＷｅｌｃｏｍｅＢａｃｋ制度」も導入しています。理解して入社してもらうだけでなく、気兼ねなく出戻れる仕組みも用意されています。このようなオープンな採用スタンスは、これからの労働力人口の減少時代では非常に効果的でしょう。
（船井総合研究所・河内谷庸高）
☆船井総研が運営する物流ビジネス情報サイト「http://www.ecologi.net」
※記事は16年1月の記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。