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  • ブログ・花房 陵

    競合企業を意識する

    2007年10月15日

     
     
     

    ●日本郵便が民営化された
    郵便と宅配を併せ持つ24万人の企業が日通と提携します。日本一の物流施設保有企業と
    日本一の物流マンが揃った企業が共同営業をかけ始めるということです。
    物流は量の科学、何より規模の経済性が有効なビジネスですから、中小零細や中途半端
    な性能では太刀打ちできないはずです。
    中期的にはすべての物流企業が系列になってくることが予測されるでしょう。
    差別化を図る、優位性を確保する、競争の本格的な時代に入り始めたのです。
    「ペリカン便」「ゆうパック」を性能評価してきた時代は終わり、圧倒的な規模がヤマトと佐川
    の宅配便競争を始めることになります。当面は精度や品質、ブランドイメージで競争するの
    でしょう。
    自動車業界もトヨタだけが生き残るわけではなく、マーケットの棲み分けという時期もあるから
    日通&JPの業務提携もすぐさま脅威にはならないかも知れません。規模の経済性が優位に
    働かない場合もあるかも知れません。しかし、それでは経済原則に合いません。
    ●サービスを競争することの意味
    物流事業は許認可事業でしたが、10年以上前に完全に規制が解除されて誰でも、いつでも
    新規参入が可能なビジネスになりました。運輸業もすでに飽和といえるほどの参入が続いて
    事業規模が完全に2極化しています。
    小回りというか、生業としての零細事業者と完全なシステムで設計された巨大運送企業の極
    が出来上がりつつあります。欧米からの参入も始まり、日本というよりアジア全域をターゲット
    とした物流サービス競争が始まっています。
    倉庫業も3PL事業者の台頭によって不動産の保有者でなくても免許取得が可能になりました。
    こちらも備蓄型倉庫から、流通のための一時保管、ネットワーク保管の倉庫業がスタートしてい
    ます。国際物流でも港湾や空港には新規事業者として、不動産業や商社、金融機関を背景に
    した事業者が積極参入しています。
    我が国の国内貨物流通が低迷していながら、さらに内需も先細りの中でこれほどまでに、新規
    参入、異業種参入が活発なのは、日本を含んだアジアが一つのマーケットに見られるようになっ
    たからです。
    ロジスティクスとは調達から販売までの、すべてのモノの動きを制する活動です。
    生産と消費がアジア全域に広がっている経済成長の勢いは、これからも活発です。中国は今まで
    欧米を向いていましたが、日本を中継とした欧州へもそして自らの権益の範囲だったアジア全域
    に対して流通網を作り始めています。政策は遅れがちでも華僑資本がそれを補います。
    サービスの競争は国際物流を始点として、従来の販売物流、生産物流を統合した物流の統合化
    が進んできています。船や飛行機、列車やトラックといった機能別の性能比較ではなく、インテグ
    レーションという複合利用の性能を競う時代になっているのです。
    ●いきなり英語は話せなくても
    国際物流と言えば通関業務、商業英語の必須科目でしたが、昔から貿易と国内物流はミッシン
    グリンクでした。断絶していたし、その不自由さは商社や代理店が負っていたのです。
    物流業界がコストやサービスを競うようになって、実は目先の単価競争や業者交代で済んでいた
    のがこの20年であれば、これからの10年は複合一貫物流の正念場です。
    海運代理店、航空代理店、倉庫業の3社が合併して、初めての3モード物流会社が登場したのは
    つい最近の伊藤忠グループ。その後商社グループはモード合併を繰り返して、体制上では総合
    国際物流サービスの提供を始めています。
    国内業者も業務提携で国際物流フォワーダーとのビジネスを模索してきましたが、文化の違い、
    人材交流の難しさ、・・・・理由はともかく真剣に取り組んで来なかったために業務提携の効果を
    出せなかったり、契約そのものを解消したりして回り道をしてきました。
    これからはそうはいかない。船も飛行機もトラックも貨物列車も合わせた輸送サービスを行えなけ
    れば、顧客は商店街の老舗だけになることは明白です。
    わずかな個人消費に左右される通販事業者相手の、小規模宅配事業はさらにしばらくは活況を
    見るでしょうが、10年の勢いはありません。人口と所得の伸びが追いつかないからです。
    日本の企業が日本市場だけで生き残れるのは飲食だけ。ほとんどすべての産業がすでにアジア
    や海外を糧にしています。農業もそうです、ゲームやコミックもグローバル化しています。
    首都圏のホテルや観光はアジアのお客が半分を占めるようになっています。
    個人消費や国内生産額は量としてはだんだん縮小してゆく、そのことの意味が少子高齢化であっ
    て、付加価値を高める政策というので頼りになるのがゲーム産業、飲食サービス・ソフトウェアです。
    倉庫や運送の極めて切実な目の前の貨物を扱いながら、10年先にはその量が減ることを知らね
    ばなりません。競争が始まれば、減る勢いに拍車が掛かります。
    国際化と自社の競争強化は同時進行で進まねばならないのです。
    ●顧客満足をはき違えてはいけない
    サービス業は対価を受け取るべきビジネスで、値下げや過剰サービスを常用してはならない。
    より優れたサービスをより高価な料金で提供することが競争であって、規模の拡大を目論まない
    なら値下げを避けなければ、自身の縮小につながる。
    バーゲンは5割の販売拡大を目指して3割値引きをするものです。最近の15年間はこの原理を
    忘れたために、売りすぎても利益が出ない構造になってしまいました。
    顧客に対価を求めるなら、年々増加することが満足の拡大です。単価を下げるなら量を拡大する、
    口座を開発してさらに拡大させる。料金競争が顧客奉仕になるのは、自滅につながります。
    売上の拡大が満足の向上であって、利益の上昇が競争勝ち抜けの証拠です。
    顧客開拓ができなければこの図式は成り立たず、いつまでも既存顧客に引かれ続けるようでは
    規模の拡大という基本戦略が描けません。
    物流サービス事業が2極に向かって行くのであれば、きっちりと自社の方向を定めなければな
    りません。事業の戦略は時として変更不能に陥るからです。タイミングこそが重要で、後から変更
    することは命取りになるのが戦略なのです。
    ●現場を死守するために
    日々の仕事で追われていても、仕事の将来像は描けるはずです。職場の物量が伸びるのか、
    次の成長を待っているのか、それとも衰退が伺えるのか。聞かなくても感じることができるはずで、
    物量が伸びなければ職場に将来はありません。
    しかし、物流アウトソーシングを転用してビジネスプロセスの全域アウトソーシングへ転換すること
    は可能です。物流関連業務は多くに分岐されていて、営業代行、生産代行、管理代行など、
    企業の物流回りには専門家の期待が集まっています。
    輸送や保管、作業のコストも計画の精度でコントロールできるモノです。上流工程に上がってゆくこ
    とで、業務代行やビジネスパートナーに格上げすることが可能。今後の10年はこの方向でしか物流
    は生き残れないでしょう。またはケイレツに入るかでしょう。
    学ぶべき事がたくさんあります。荷主の立場になり、営業や生産の現場に詳しくなれば、今間まで
    の物流技術が活かせるのです。
    経験を活かすのではなく、新たな学習がこれからの物流業界を変えてゆく唯一の可能性なのです。

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    花房 陵

    イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
    コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。

     
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