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    経営再生物語(323)人材育成について(18)A社の事例(3)

    2021年2月22日

     
     
     

     人材育成への取り組みは不屈の闘志がなくてはならない。あらゆる困難を乗り越えていく信念として人材育成していくことに価値観を見出していくことだ。この考えをしっかりとトップが持ち社風にしていくことだ。このケースでは5つのポイント、すなわち、①家庭環境の大切さ②管理体制③将来の夢④適材適所⑤ローテーションがある。このポイントをしっかりと把握して実践することである。

     

     この社長は私のアドバイスを聞いて〝人事を尽くして天命を待つ〟の心構えで腹をくくった。社長云く「確かに持ち逃げが判明した時は目の前が真っ暗になりましたよ。頭をガーンと殴られたようなショックを受けました。でもよく考えてみると私が悪かったわけです。私のやり方がルーズで自業自得です。管理体制を強化し二度とこういうことが起きないようにしました」。

     一般原則として人材育成にとって上記のようなケースを起こさないために人間的な絆を強化しなければならない。社員の家庭環境を把握していく。休日の過ごし方、趣味、交友関係についてもよく知っておく。使い込みとかの社内犯罪はじっとよく観察すると分かるものだ。仕事と関係ない電話がよくかかってくる。会議中に私用の携帯が鳴る。派手な振る舞いが目立つ。休みなのに出勤したり、遅くまで働く。…じっと見てみると変化を感じるものだ。この変化は人間的絆が強ければそれだけですぐ分かるものだ。

     人間的絆は、ささやかな努力や成長であってもきちんと認め潜在している能力に期待を寄せ、さらなる前進や進歩の為に指導援助し、目標達成への貢献を評価し職場の中での存在感を高めていく中で育まれる。単にうまが合うとかコミュニケーションを良くするとかの表面的な人間関係ではうまくいかない。職場で責任を任され、期待され、役割を果たしていく中で人間的絆が強まる。

     持ち逃げした経理課長は行方不明のままである。ポリスに追われる日々である。逃亡者としての人生は不幸である。良心の痛みに責めさいなまれていることだろう。人生を台無しにするとはこのことだ。逃げていく人生は暗い。経理課長の存在を許していた会社の責任も大きい。今まで述べてきた5つのポイントをないがしろにしてきた会社のトップは不幸者を生み出したわけだ。誰が悪いのでもない。原因を作り出したのは会社のトップの姿勢にある。この社長は深く反省して人事を尽くして天命を待つの心構えで難局を乗り越えた。この心構えは人材育成の核心である。

             (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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