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    経営再生物語(327)人材育成について(22)Aさんの事例

    2021年3月22日

     
     
     

     「難病も我にたまいし恵みなり、災い転じて福としならしむ」

     

     この歌は、知的な能力はあるが、運動神経がおかされていく難病、ALSにかかっている患者の作である。ALS患者Aさん(51歳)は発病してから20年目の心境として、この歌をよんでいる。

     Aさんは24歳の時結婚し、32歳の時に発病、病気の為妻と離婚。発病し、不治の病いALSと分かった時、自殺を試みて失敗している。20年目の心境として、「僕を暖かく励まし、支えてくれる人が多かったからです」と述べている。Aさんの生き方に触れて私は〝ピンチはチャンス〟とつくづく感じいるものがあった。

     Aさんは現在、愛媛県の松山の病院で暮らしている。Aさん曰く「悲しみを受け止め苦しみを受け入れる時、生きていかされている素晴らしさと尊さを教えられる」。日に日に体力が落ちていくAさん。言葉を発する機能も弱っていく。音声の出るパソコンを使って意志を伝えようとする。口からの食事も出来なくなり、胃から直接栄養を取っている。それでも生きようとする。「失ったものより残ったものを大切にしたい」とひたすら前向きなAさん。正にピンチである。

     しかし、このピンチにたじろがす正面から向き合っている姿は、生ということに対して前向きなAさんの生き様が心にしみる。「残された時間が限られてきたように思う。ですから今まで以上に時間を大切に使っていこうと思います」。

     Aさんは郷里の三重県名張市に帰郷する。自殺をはかって立ち直りのきっかけとなった教会。その教会で神に祈りをささげる。Aさんの目に涙が浮かびにじんでくる。この大ピンチに合わなければ、このような深い人間的感動を味わうこともないだろう。

     Aさんの主治医曰く。「ALSは普通発病して5年でお迎えがきます。Aさんは20年目にし突入しています。目的をもっていきたいという精神力が全てです」。Aさんの目的はALSという病気を社会に知ってもらうことである。その為Aさんは「辛抱」という手記を発表し、会報を発刊し、「難病を考える会」をつくる。

           (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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