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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(138)チェンジ=変わること 〈事例E〉
2016年12月27日
〈直面する課題〉
A社は特定荷主の比率が売り上げの90%を占めている。残りの10%も返り荷の荷主であるので、実質は100%である。創業以来、荷主の歴史と歩みを一つにしている。A社には運送部門と構内部門があり、運送部門が70%、構内部門30%の内訳である。A社は転換期に直面している。「チェンジ=変わること」が、経営改革のテーマとなっている。?自車部門の赤字を傭車差益で埋めている
運送収入に占める人件費が高いことで、自車部門が慢性的な赤字となっている。運送収入対人件費率は70%と、異常値である。給与体系が年功給なので、人件費の年々の上昇がどうしても食い止められない。しかも、高齢化が進んでいる。平均年齢は50歳である。給与水準は乗務員平均で年収800万円である。自車収支が赤字なので、新規の乗務員は採用しない。定年者が出るとその分、傭車で対応する。
自車対傭車の比率は3対7である。この3対7の比率のおかげで、かろうじて運送収入は赤字をまぬがれている。自車収支の赤字を傭車差益で埋め合わせている。乗務員で構成する労働組合の力も強く、年功給である給与水準を是正できない。乗務=ハンドルを握る仕事の世間相場の1・5倍ぐらいの水準になっている。
社会保険料は会社負担が70%、個人負担が30%となっている。法定福利費も年々上昇している。なぜこういうことになるか。荷主が1社専属なので労使対立が激化してストライキが続けば、荷主に迷惑がかかる。そのため労使交渉のギリギリで、組合の要求に押し切られる。簡単にいえば、賃金引き下げができないのだ。?荷主の物流合理化プレッシャーが強まる
A社は荷主の成長につれて車両、人員とも拡大してきた。ところが、荷主の経営環境が悪化、ここ3か年連続して経常利益がマイナスとなってきた。そこで物流コストの見直し、圧縮が必須の経営課題となってきた。物流コスト削減目標は30%である。この30%を3か年で達成することが経営上の至上命題となっている。
A社は断崖絶壁に立たされている状況である。死活問題である。今までA社は荷主に対してキメ細かく対応してきた。荷主との人間関係も良好で、それなりの交際を積み重ねてきた。冠婚葬祭にもキチンとつきあってきた。ところが荷主の危機で、ストレートに直撃された。?トップマネジメントの危機
A社のトップが脳溢血で倒れた。トップは65歳。A社は混乱する。これから先どうするか。脳溢血で倒れたトップは言語が思うにまかせないし、体も不自由になっている。残された幹部はお先真っ暗となる。急きょ、トップの奥さんが社長となる。役員陣は、トップの息子35歳、番頭格60歳、それに奥さんの3人で構成する。奥さんの心境は、「やめたい」ということである。このまま仕事を続けていっても展望がない。赤字がかさむだけである。組合の存在も重荷となっている。確かに、トップは真心で荷主に尽くしてきた。トップの気持ちを思えば、ここでやめることは無念極まりないことである。それでも先行きの見通しのないことは、はっきりしている。奥さんとしては「やめたい」。?A社の概要
A社は車両台数100台、乗務員95人、現業員100人、事務スタッフ15人の計210人の会社である。現トップが創業して40年。きっかけは構内作業である。荷主の社長がトップの働きぶりをみて、「人を連れてこい」となったのである。トップは10代の頃は極道稼業にも手を染め、ヤクザの道に入るスレスレだった。これが荷主の社長に目をかけられて、構内作業の親方としてのチャンスをものにすることができたのである。
トップは経営全般を一人で取り仕切ってきたワンマン社長である。経営信条は?荷主に尽くす?である。荷主構成が1社専属なので、顧問税理士が「ほかの荷主も開拓したらどうか」とアドバイスしたことがあった。それに対しては「ノー」。トップの考えは、ほかの荷主を開拓することは現行荷主に迷惑がかかる—-というもである。
息子はお家の一大事で、会社に入ってきた。それまでは大学を卒業後、別の会社で化学関係の研究者として働いてきた。家業を継ぐことなど思いもよらなかった。そもそも父は、一言も「継いでくれ」とは言わなかった。 -
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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