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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(198)大切な心の経営〈事例A〉
2018年5月28日
〈創業30年に幕をおろす〉
会社に出てこなくなった社長の代わりとして、やむなく古参幹部が団体交渉の席につく。しかし、悲しいかな、古参幹部には決定権がない。組合からはコテンパンに責められる。古参幹部の1人が「これではやってられない」と退社するほどの事態である。
2代目社長の強がりにも底が見えた。裏付けのない経営力しか持っていなかったA社長。単に先代の息子というだけのことである。団体交渉に引っ張り出されてからのA社長は見るも無残。カッとはくるが、組合からの街宣車攻勢でやむをえず譲る。
街宣車攻勢となると、荷主がじわじわ逃げていく。ただでさえ売り上げがダウンしているのに、荷主まで尻込みしていく。強気のA社長も組合の言うことを聞かざるを得ない。
「あの超ワンマン社長に勝った。ザマみろ」と組合は勢い付く。ズルズルと組合の要求に引きずられていく。気づいてみれば、もろもろの労働条件の向上で、人件費がアップしてくる。人件費のアップに耐え切れなくて赤字が深刻化する。
3年連続の赤字で債務超過となる。孤立したA社長はついに経営を投げだす。辛抱ができなくなったのである。資金繰りがつかなくなっていたA社は、創業30年の幕をおろした。倒産である。
A社長の失敗は、現場の心をつかみ切れていなかったことにある。働く一人ひとりの心が分かっていなかったのである。いくら国立大学を出て頭がよくても、心が読めなくては経営に失敗する。「このおいぼれ」という言葉に見られる傲慢さ。派手でええかっこしいの行動。イエスマンしか周りに置かなかった超ワンマンぶり。
A社長の生き方は「私欲」に重点を置いてきた。自分さえよければいい︱︱とばかり、棚からぼた餅の社長の甘い蜜をむさぼってきた。そのつけが社員から孤立し、見放され、ついには「バンザイ」していく姿となった。
バンザイとは倒産のことである。A社長いわく「やっぱり金の切れ目が縁の切れ目で、本当の意味で心の通じ合う経営幹部を持てませんでした。心の大切さを知りませんでした。先代から引き継いだすべてがパーとなりました。自己破産して、はじめて自分のバカさ加減を知りましたよ」
この記事へのコメント
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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