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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(212)捨て身の話し合い〈事例A〉

    2018年8月27日

     
     
     

    〈切るか削るか〉

     

     A社の現状は、数字をみれば分かる。大きな壁に直面している。進めば進むほど赤字のドロ沼である。

     労働組合いわく「赤字のツケを我々に押しつけようとしても、それは無理だ。経営者には経営者の責任がある。何とかするのが経営者ではないのか」

     A社長いわく「何とかできないから話し合っているのだ」

     労働組合「今までも十分協力してきた。一時金の30%カットもOKしてきたし、賃上げゼロにも協力してきた。これ以上どうせよというのか。月の賃金も25万〜30万円で、生活するのにギリギリだ。独身者は何とかやっていけても、妻帯者は生活できない。妻をパートに出してやっと支えている」

     筆者はA社長の真意を確かめた。

     「このままでは平行線です。社長はどうしても事業を続けたいのですか。ここまでくると、ご破算にするという考え方もあります。ご破算とは事業をやめることです。利益のない仕事をいくら続けても無益です。スッパリやめるのも決断です」

     A社長いわく「わたしがオヤジ、すなわち創業者だったら煮て食おうが、焼いて食おうがオレの勝手となって、キレイサッパリ手を引くことをしたかもしれません。でも2代目として、どうしてもわたしの代で会社をつぶしたくないのです」

     そこで筆者は客観的な立場で勧告書を作成し、A社長と労働組合に提起した。

     ◎勧告書の骨子

     当面の対策として左記の事項を勧告する。

     ①社長の報酬は月額150万円が100万円となっているが、さらに50万円にする。

     ②労働組合に対しては、現行の給与体系を改革して成果主義の給与体系に移行することへの合意を求める。現行は主として基本給と諸手当(家族手当、住宅手当)、時間外割り増し手当で構成され、基本給は年齢給と勤続給で組み立てられている。成果主義の給与体系では、基本給を仕事給とし、年齢、勤続では組み立てない。仕事について一本化した給与(職務給)とする。諸手当は属人給であり、全廃する。これに全廃した原資を組み込んで成果給を決定する。

     成果を計るモノサシとしては評価制度を確立する。モノサシは量と質で構成する。量の基本は乗務員一人ひとりの個人別損益の把握である。そして成果給は会社割り増し賃金とする。法定の時間外手当と差額が発生すれば、その差額分を支払うこととする。

     前記の①と②の当面の対策を実行して、まず黒字化を達成する。その上で社長の報酬も元に戻し、一時金の水準も元に戻すためには、〝急がば回れ〟のことわざ通り、原点、基本に立脚した組織風土づくりが不可欠である。

     それは5S(整理、整頓、清潔、清掃、しつけ)の行き届いた職場づくりのことである。明るく活気のある職場づくりである。信頼で結び付いている組織風土づくりである。

     この勧告書を実行すると、当面はどうなるか。勤続20年のベテランドライバーの給料は確実にダウンする。一方、若手ドライバーはアップする。ベテランには不満が残る。A社長の情からしても、しのびないことである。一律に10%の賃金カットを強いていくよりは、企業としては活力アップという点で、成果主義の給与体系のほうが力を発揮する。〝苦しい中でもやれば報われる〟という給与体系が、成果主義の給与体系であるからだ。

             (つづく)

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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