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ブログ・小山 雅敬
第217回:「生産性を上げる」とは結局何をすればいいのか
2021年10月19日
【質問】働き方改革に関連して「労働時間の削減」と「生産性の向上」という言葉が最近よく出てきますが、「生産性を上げる」とは具体的に何をすれば良いのかわかりません。わかりやすく教えてください。
「生産性を上げる」とは一般的には1時間当たりの付加価値や従業員一人当たりの付加価値を上げることですが、財務面から算出する用語であるため、行動レベルで何をすればよいのかがわかりにくいと思います。運送業の場合、「生産性を上げる」とは次の5つを意識して取り組むことだと考えてください。
①運行効率を上げること
②運転以外の時間を減らすこと
③運賃や料金を上げること
④配車係やドライバーを教育してその技量を上げること
⑤稼げるサービスを新たに開発すること
まず、①の運行効率を上げるためには、当然ながら実働率、積載率、実車率を上げる必要があります。3つの各比率をそれぞれ80%以上とし、運行効率50%以上を目指します。車両の昼夜稼働や貨物の積み合わせ、帰り荷の確保など普段から経営者が意識されている項目なのでわかりやすいと思います。
②の運転以外の時間削減については、待機時間など非効率な時間を極力なくす、荷役作業の機械化や作業内容の見直しなどを進めるなどが該当します。なお、運行ルートの見直しや大型車両へのシフトで総走行時間を減らすことも有益です。
③の運賃や料金を上げるとは、昨今では「標準的な運賃」の届け出後に運賃交渉に果敢に取り組むことがこれにあたります。運賃自体の値上げ交渉が本筋ですが、コロナ禍で荷主の体力が減退しており、まずは待機時間料の確実な収受を優先して交渉している会社もあり、自社が取り組みやすい進め方でよいと思います。
④の配車係やドライバーの教育により、その技量を上げるとは、従業員個々で人が持つ能力を最大限発揮してもらうように育てることです。配車係の技量で運送業の収益は2割変動します。その重要な業務に見合う教育や指導が必要です。また非効率な情実配車が生産性を下げますので、ドライバーの賃金体系がその要因であれば、賃金の計算基準を変えて、効率配車に専念できる環境を整えることが経営者の役割になります。一方、ドライバーは教育や免許支援制度で多能工社員に育てる必要があります。
⑤の新たなサービスの開発は、顧客に有益な新たな価値を既存業務に付け加えて収益機会を増やすことです。本来業務(運送及び関連業務)の範囲内で開発する方が成功確率を高めます。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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