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ブログ・小山 雅敬
第232回:息子に運送会社を継がせるな
2022年7月12日
【質問】現在、運送会社を経営しています。年齢は60代後半です。悩みはひとり息子が運送会社の経営に全く興味がなく、運送業とは無関係の舞台や音楽の道を目指していることです。将来の事業承継についてどう考えるべきかを迷っています。
【回答】運送会社では息子などの親族に事業を承継する会社が多いのですが、子供がいない、または子供に会社を継ぐ意思が乏しい場合、将来への不安を漏らす経営者がおられます。長年、数多くの運送会社を見てきた経験から私見を述べれば、「もし息子がやる気満々なら早めに譲る方がよい。その際、先代は未練がましく残らず、別のことをした方がよい。もし、息子に継ぐ意思が乏しい場合は、無理に事業を継がせず、本人の好きなことをさせた方がよい」との結論になります。「嫌がる息子に会社を継がせるな」と考える理由は過去に事業承継で失敗している会社を何社も見てきたからです。
例えばA運送会社では、先代社長から経営者資質に欠ける後継者に事業を承継した後、社内の統制がとれず放任状態に陥り、幹部の退職が続いていました。また、B運送会社では、息子に社長を譲った後も、先代が口やかましく社長に指示している姿を見ました。高齢ながら親分肌の先代に比べ、息子はひ弱な文学青年です。息子は毎日怒られ続けて疲弊しており、常に会長の顔色をうかがう日々です。仕事が辛いので好きな趣味に走り、そんな姿を社員が見て、ますます信頼を失うという悪循環に陥っていました。結果的に、息子はメンタルに支障をきたして社長を退任することになりました。事業承継で最も大事なことは会社と社員の将来だと思います。
会社は経営者の私物ではないので、そこで働く社員とその家族、及び会社を取り巻く取引先などの関係者にとって最善の道を選択すべきです。今後の事業承継は息子への承継よりM&Aが主流になるでしょう。その方が社員も幸せになる確率が高いからです。
また、自分の会社が生きがいであり、仕事が何より好きな社長が年齢を理由に退任する必要はないと思います。今後、社長は事業意欲が衰えない限り、自分が納得できるまで社長を続け、十分やりつくしたと思ったら、後は安心して任せられる同業他社に譲渡する。譲渡後も可能であれば愛着のある会社名を残してもらい、もし望まれれば売却後も社長を続けてもよいと思います。
M&Aにより、会社の基盤がより強化され、今まで頑張ってくれた社員を優良企業の正社員にさせることで、より安定した生活を与えることができます。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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