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ブログ・小山 雅敬
第236回:中小運送会社が長距離ドライバーの労働時間を削減する方法
2022年9月13日
【質問】2024年の法改正に向けて長距離ドライバーの労働時間削減方法を検討しております。人や設備が豊富な大手運送会社の成功事例はあまり参考にならないので、中小運送会社の取り組み事例があれば教えてください。
現在、弊社の関与先運送会社は大企業から零細企業まで多岐にわたりますが、2024年対策の進め方を見ると、資金力や人材に余裕のある大規模運送会社と、両面ともに乏しい中小運送会社の取り組みには明らかな相違が見られます。
大企業の場合は、既に自社拠点間で中継輸送を実施しており、製造拠点からの直送体制を見直し中間地点に新たな保管拠点を設けたり、従来の長距離運行を折り返し運行が可能な地点までの一日運行に切り替えたりしています。
また、大型トラックをトレーラに順次切り替えるなど車両の大型化を進めています。荷役作業の機械化はほぼ完了し、今は積込作業と運転業務の担当を分けて専業化を進めています。
また、荷主と連携したバース予約システムで待機時間を削減しています。それらの取り組みは確実に業務の効率化に寄与しており、一定の労働時間短縮を達成しています。
一方、圧倒的多数の中小運送会社は前記の取り組みの前提となる資金や人材が不足しており、荷主との直取引が少なく、二次・三次下請けの会社が多いため、大企業と同じことができません。
弊社関与先のうち、長距離輸送を行っている中小運送会社は日々試行錯誤しながら主に次のような取り組みを実行中です。
1.高速道路を全線利用に切り替え…従来は往路のみ高速利用とし、復路は一般道を利用していたが、今後は全線高速利用に切り替え、荷主に往復高速代を請求。
2.長距離ドライバーは運転業務に特化…従来は帰庫後に横持ちや積込作業に従事していたが、地場ドライバーの業務分担見直しにより長距離ドライバーを運転業務に特化させる。
3.フェリー利用…従来の高速・一般道走行からフェリー利用に切り替え。
4.運行計画見直し…荷主側の意向に沿った従来の運行計画を見直し、運行ルート変更・休憩・休息の確保を実施。
5.出庫時刻を指示…従来ドライバーに任せていた出庫時刻を会社が厳格に指示。
6.待機時間削減交渉…最も無駄な待機時間の削減を荷主や元請けに要請。
7.IT点呼やデジタコの導入…大企業では当たり前でも中小企業では今から検討する会社も多い。無駄な移動時間の削減や労働時間管理の効率化に効果的。
8.賃金制度の見直し…労働時間を削減しても、給与が減らない仕組みを導入。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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