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  • ブログ・野口 誠一

    第197回:最高の瞬間

    2008年11月28日

     
     
     

     Aさんは水を得た魚のごとく、まっしぐらに便利屋人生を突き進んでいく。やがて収入が安定したところでマンションを借り、3人の子供を引き取った。
     そして3人に倒産の事情を説明し、その後の不甲斐なさを詫び、そして今後とも便利屋として生きていくことを宣言した。
     数年が過ぎ、大学を卒業して就職した長男がはじめて給料をもらった日の夜、黙って両親の前に封筒を置いていった。なかにはお金と手紙が入っていた。
     そして手紙には「お父さん、お母さん、毎日働いてばかりいないで、たまにはホテルで食事でもして下さい」と書かれてあった。
     


     その頃のことである。Aさんは八起会の例会で体験発表を行ったが、最後にくだんの長男のことに触れ、次のように締めくくった。
     「その手紙を読んだとき、私も家内も涙が出て、涙が出て……。いままでの人生で最高に幸せな瞬間でした。これも倒産のおかげです。もしも私が相変わらず社長で羽振りがよかったら、はたして息子は私たちに、ホテルで食事でもといって小遣いをくれたでしょうか。いえ、むしろ私たちに小遣いをせびっていたことでしょう。それゆえ、倒産は私の唯一の財産なのです」
     この言葉の目方はかなり重い。続けてAさんは「二度と社長にはなりたくない」「社長を捨てて幸福を得た」「生涯、一匹狼の便利屋でなんの悔いもない」と言ってのけた。
     私は「よくぞ言ったり」と快哉を叫んだ。一度「社長」と呼ばれた人は、その響きを忘れられない。その悪魔的な魅力にひっかきまわされて苦しむ人もいる。
     Aさんはそういう人たちに、社長になることだけが幸せの道ではないことを、社長でなくても幸せになれることを、身をもって教えてくれたのである。見事な「心の再起」と言っていい。

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    野口 誠一

    八起会 会長
    株式会社ノグチプランニング 代表取締役

    昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
    昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
    しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
    翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
    弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
    再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
    昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
    平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。

    電話番号:03-3835-9510(倒産110番)
    HP:http://yaoki.html.xdomain.jp/

     
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