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ブログ・野口 誠一
第229回:調味料の製造販売で独立
2009年7月16日
一芸に秀でていれば、大抵はその道その道で成功する。が、経営だけはそうもいかない。営業手腕が抜群でも計数管理が苦手だったり、技術力・開発力にすぐれていても社員教育が苦手だったりでは、経営者失格と言っていい。経営は何をおいても総合力であり、バランスである。俗に経営センスというのも、そのことにほかならない。
今回から、抜群の経営資質に恵まれながら、経営バランスを失ったばっかりに倒産を余儀なくされ、そこからまた見事に再起した経営者の実例を紹介しよう。
Wさんは昭和54年、29歳の若さで独立し、香辛料の製造・販売を始めた。彼は再婚した母親の連れ子で、父親が実の父ではなかったことから、中学を卒業すると同時に、地元九州の薬問屋に就職した。が、向学心やみがたく、働きながら夜間高校に通い、大学も通信教育で卒業した。その点では理解ある会社だったと言っていい。彼はそこで14年間、調味料部門の営業を担当した。
Wさんに独立の心が芽生えたのは、ささいなきっかけからである。その日、会社の展示会に社長が中学生の息子を連れてきた。当然、社員全員が頭を下げる。しかし社員は、社長には世話になっているが、その息子に世話になっているわけではない。
そのときの彼のなかで違和感がはじけた。が、何年か経てば、その息子が社長になることは明らかである。彼の脳裡を「独立」の2文字がよぎった。
独立を決意したWさんは1年後、辞表を提出した。しかし引き止められた。彼の営業成績は社内随一だったのである。お礼奉公のつもりでさらに1年勤め、再び退職を申し出た。また引き止められたが、独立の心やみがたく、粘りに粘ってついに退職にこぎつけた。あとは独立あるのみ、目指すは調味料の製造・販売である。このとき彼は自信と希望にあふれていた。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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