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ブログ・野口 誠一
第235回:不渡り出して破綻へ
2009年9月4日
自転車操業は受注が減れば、とたんに苦しくなる。それに比例して赤字と借金だけは確実にふえていく。それまでは早期、現金収入の官庁取引とあって、製造業者にも現金決済をしてきたが、ついにそれも不可能になった。
手形を切るようになったら会社は終わり、と心に戒めてきたNさんだったが、とうとう手形を切らざるを得ない事態に追い込まれた。官庁にコネをつけてくれた友人たちも、「もう見切りをつけたほうがいい」と忠告してくれたが、彼はなおも社長のイスにしがみつく。そして、ついにそのときがやってきた。
創業して5年目の平成5年11月、下請けのスチール製品製造会社があっけなく倒産してしまった。Nさんはその下請けに600万円ほど手形を切っていた。が、そのときNさんは、下請けがその手形を暴力金融に持ち込んでいるとは知る術もなかった。
さらに悪いことに、Nさんはその下請けに製品を発注済みだった。なおも経営を続けるとすれば、その発注分を別の会社に振り替えなければならない。が、すでに借金だらけのNさんに、そんな余裕はなかった。そしてついに不渡りを出し、あえなく倒産を余儀なくされる。
だが、Nさんの本当の地獄はここから始まっていく。いきなりサングラスの3人がやってきて、Nさんが振り出した額面300万円の手形を出し、いますぐこの場で払えとすごむ。が、Nさんにそんな金などあろうはずもない。といって彼らが許してくれるはずもない。
結局その日、Nさんは彼らの車に押し込まれ、「とにかく金をつくれ」の一点張りで脅され、都内をひきまわされた。知人やサラ金をまわり、30万円ほどつくったその夕方、ようやく解放されたが、彼らは「明日もくる。300万円になるまで毎日くる」と言い残して去った。そのとたん、Nさんを言い知れぬ恐怖が襲った。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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